天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

薬とうまく付き合ってコレステロールを下げる

順天堂大医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 となると、働き盛りの中高年男性は、薬でLDLをコントロールするしかありません。定期的に血液検査を受け、LDLの数値が上がっている人はコレステロール降下剤を服用して突然死を起こす心臓病を防ぐ。そして、服用しながら好きなものを食べて活力をアップさせ、バリバリ働けばいいのです。

 コレステロール降下剤には、1970年代に日本の遠藤章医師が発見した「スタチン」という優秀な薬があります。いまは、より効果が高いタイプが何種類も出ています。私もコレステロール値が気になり始めた45歳ごろからスタチンを服用していて、もう15年以上の付き合いになります。

 近年、コレステロール降下剤の重篤な副作用をクローズアップした意見が散見されます。たしかに、筋肉痛や関節痛などの副作用は起こります。しかし、筋萎縮や横紋筋融解症などの重篤な副作用は、処方した医師の管理不行き届きです。信頼できる医師のもとで定期的に血液検査を受けながら服用すれば、いたずらに怖がる必要はありません。宝くじで1億円が当たるのと同じようなまれな事象を、誰にでも起こり得ることのように考えて避けるのは間違っているといえます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。