Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

データの読み解き方 がんの生存率をうのみにしてはいけない

注目はⅠ期/Ⅳ期比 (C)日刊ゲンダイ

 一方、肝臓がんは早期に手術できた症例でも、5年生存率が50.7%。10年後には29.8%に低下。年を経るごとにデータは右肩下がりで、思うような治療成果が得られないことが分かります。がんごとに5年と10年の数値を比較すれば、再発しやすいがんかどうかの手掛かりになるのです。

 もうひとつは、施設ごとに示された5年生存率です。ポイントは、生存率の良し悪しをうのみにしてはいけないこと。

 たとえば、胃がんの5年生存率で比較すると、最も成績が良かったのは石川県立中央病院の87.8%。冒頭で触れた全体の5年生存率を20ポイント近く上回っています。これだけ見ると、素晴らしい結果ですが、データの中身を詳しくチェックしてみましょう。

■注目はⅠ期/Ⅳ期比

 公表されたデータは、各施設のがんの部位ごとの5年生存率のほかに、①ステージⅠ~Ⅳの患者さんがどれくらいの割合でいるか②男女比③Ⅰ期/Ⅳ期比④手術率などが示されています。注目は特に③です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。