Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

データの読み解き方 がんの生存率をうのみにしてはいけない

注目はⅠ期/Ⅳ期比 (C)日刊ゲンダイ

 ③のⅠ期/Ⅳ期比は、ステージⅣの患者さんに比べて、ステージⅠの患者さんがどの程度いるかを示す割合。大まかに末期と早期の患者さんの比率が分かります。数値が大きいほど、早期(ステージⅠ)の患者さんが多く、数値が小さいほど末期(ステージⅣ)の患者さんが多くなります。

 石川県立中央病院のⅠ期/Ⅳ期比は8.79。今回、治療を受けた方は圧倒的に早期の方が多いのです。5年生存率と10年生存率で比較した通り、胃がんは早期に治療するほど結果が良くなりやすいことから、早期の方の多さが数値を押し上げたと解釈できます。

 2番目に良かった大阪府立成人病センター(84.3%)は、Ⅰ期/Ⅳ期比が7.47。早期と末期の割合も石川に次いで高く、早期の方の多さが影響したのでしょう。

 一方、胃がんの5年生存率の下位2施設は青森県立中央病院(60.9%)と名古屋医療センター(62.7%)で、Ⅰ期/Ⅳ期比はそれぞれ1.99と2.32。上位2施設に比べて小さく、末期の患者さんが多く、それが全体的な5年生存率の低さにつながったと考えられます。しかし、Ⅰ期の方に限ってみれば、どちらも90%超。早期の方の治療成績は決して悪くないのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。