息子さんの場合、民法総則、刑法、憲法で違和感を覚えたというのなら、法的思考が合わないのかもしれません。ただ、「法律が合わないからすぐ文学」という発想だとしたら少々心配です。法学生が法律を捨てれば、皆、三島由紀夫や平野啓一郎になれるわけでもないからです。
息子さんはまだ1年生。迷うことに意味があるし、可能性の実験こそが若者の特権です。法学部はつぶしが利く学部です。司法試験が合わなくても、他にいくらでも可能性はあります。法学部では、所定の科目の単位を修得すると、税理士、社会保険労務士などの受験資格が得られます。そのほか、簿記、公認会計士、行政書士、中小企業診断士、司法書士、弁理士、宅地建物取引士、法学検定などの試験を受けてみることもできます。公務員を目指す道だってある。もし英語が得意なら、国際公務員を目指す道だってあるでしょう。
若者が文学を目指すのを大人たちが止めるのは、ロマンチシズムに冷や水を浴びせるためではありません。むしろ、小説の読者の大半が生活者だからです。生活者の感覚から遊離すれば、人に読ませる作品は書けません。いったんは社会に出て、そこで人間社会のさまざまな理不尽さを肌で感じて、書きたいものをもって作家として出発するほうが、リアリティーのある小説が書けるはずです。
薬に頼らないこころの健康法Q&A