当事者たちが明かす「医療のウラ側」

「検査依存型医療」をやめられない医者は地方で診療できない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 私はテレビをほとんど見ませんが、例外なのがNHKの「総合診療医 ドクターG」という番組です。

 3人の研修医が総合診療医と対決する病名推理エンターテインメントで、患者さんの立ち居振る舞いや、「体温」「脈拍」「血圧」などのバイタルデータと、触診・問診などから病名を当てるのです。実際の臨床を基に作られているだけあって、とても面白く、経験の少ない私などには勉強になります。

 実際、ある回では著名な総合診療医の先生が凄腕を見せつけました。病室に入ってくる患者さんの様子と会話との落差から患者さんの「作話」を見破り、その原因はあるビタミンの不足であって、それを引き起こしているのが降圧剤であることまで見破りました。

 一緒に番組を見ていた薬剤師の妻は感心しきりで、「あなたも、こんなふうに頭をフル回転して病名を推理しているの?」と聞いてきました。私は「医師なら当たり前だよ」なんて答えましたが、実際の私にはとてもそんな余裕などありません。

■「患者ではなく検査データばかりを見ている」

 診察室では患者の検査データを読み取るのが精いっぱい。正直、その検査データと、患者さんの「○○ではないでしょうか」という言葉から病名を探っているのが現状です。

 そのせいか、ベテランの先生方からは「いまの若手医師は患者ではなく、検査データばかりを見ている。検査依存型医療をやめないと、簡単に検査結果がわからない地方で診療できないぞ」と言われます。

 ごもっともです。わかっています。ですから私は将来、田舎で診療しようとは思いません。検査データなしで診断しなければならない場所で、医者の仕事をする自信がないのです。

 しかし、それは私だけではなく若手医師の多くがそうなのではないでしょうか? いや、ベテランと呼ばれる人も同じかもしれません。

 なぜなら、医師の多くは大学病院の医局に入って専門医を目指すからです。大学病院で「教授」と呼ばれる先生も、得意分野の病気の臨床経験は豊富でも、ありふれた病気の診断治療の経験は少ない。そのため、検査依存型医療をやらざるを得ないのです。

 最近は、さまざまな診療科を回る研修医制度となっていますが、依然として多くの医師は「専門医」になることに重きを置いています。これでは、検査依存型医療は脱却できないし、地方に行きたがる医師も増えないのではないでしょうか?