Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【松方弘樹さんのケース】脳リンパ腫、化学療法が効きやすい

松方弘樹さん(C)日刊ゲンダイ

 リンパ球は、ウイルスなどから身を守る免疫を担当する血液細胞で、いくつかのタイプがあります。そのうちのBリンパ球が悪性になって、脳の中で増殖するのが「脳リンパ腫」です。

 60代以上の高齢者に多く、脳腫瘍に占める割合は3%ほどですが、最近は増加傾向。脳は、神経細胞とそれをつなぎ留める神経膠細胞からできていて、一般に語られる脳腫瘍は神経膠細胞から発生するタイプを指すことが多いですが、それとは異なるタイプです。

 松方さんが違和感を覚えた腕のしびれや麻痺などは、「脳リンパ腫」としては典型的な症状で、ほかに認知症のような症状が表れることも少なくありません。

 CTやMRIなどの画像検査で異常が見つかった場合、異常な組織の一部を採取して性質を調べる生検を行います。体の別の部分に発生したリンパ腫が脳に転移した可能性もあるため、リンパ球が生まれる骨髄に針を刺して全身のリンパ球に異常がないか調べることも重要です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。