健康は住まいがつくる

あまり使わない蛇口の水 飲んで健康に問題はないのか?

バケツ1杯分の水を流してから飲むこと
バケツ1杯分の水を流してから飲むこと(C)日刊ゲンダイ
古い水道管の汚れは大丈夫なのか

 自宅に引かれている水道管。設置されて20年、30年も経つと、配管の中はサビや無機物結晶などがたまり、バイオフィルム(ヌメリ)ができてくる。マンションなどの集合住宅であれば貯水槽内の汚れも気になるところだ。家の水道水は本当にきれいなのか。

 水道水の安全性を微生物学的な側面から研究している麻布大学・水環境学研究室の大河内由美子准教授が言う。

「水道水は塩素によって病気や腐敗の原因となる微生物は活動を抑制されますが、すべての微生物が除去(滅菌)されているわけではありません。一般家庭や病院などでも、通常は病気を起こさないメチロバクテリウムなどの細菌類が水道水から検出されます」

 この細菌類は、水道水のような有機物を含まない水中でも増殖できるので、「貧栄養細菌」と呼ばれている。1回の細胞分裂に平均5時間前後かかり、非常に増殖速度が遅いのも特徴だ。

 しかし、無害とされる細菌類でも、まだ分かっていない未知の細菌が含まれている可能性がある。それらの細菌類が大量に増殖した水道水を飲んだ場合、免疫力が低下している人では「日和見感染症」の原因になることは否定できないという。

「つまり、水道水は塩素で細菌類が増えない状態が保たれているに過ぎないのです。しかし、水を長い時間流さず止めていると、配管内の水に含まれる塩素は次第に消えていきます。そこに細菌が増殖する余地ができてしまう。そのため、配管内の水が入れ替わる目安として、朝、バケツ1杯分(約10リットル)の水を流してから飲用にすることを勧めている水道局もあります」

 集合住宅などの貯水槽では、規模によって衛生管理が異なる。受水槽が10トン以下の場合では、病院や学校などの施設と受水槽が5トンを超えるものは、条例で年1回以上の清掃や検査が義務づけられている。しかし、それ以外の貯水槽は所有者まかせ。外気温も影響するので、管理が悪いと微生物が増殖するリスクが高いのだ。

 では、対策として浄水器を付けるのはどうか。

「活性炭が入っているタイプは、水に含まれる吸着しやすい物質や微粒子は除去できますが、同時に塩素も除去されます。ですから水筒などにくみ置きする場合は一度沸かした水の方が細菌は増えにくくなります」

 それに活性炭タイプは、旅行などに出かけて長期間使っていないと、活性炭に吸着された細菌類が増殖する。帰宅したら、しばらく水を流してから飲んだ方がいいという。

 水道水に過敏になる必要はないが、あまり使わない蛇口の水はすぐに飲まない方がよさそうだ。