がん治療を変える 日本発新免疫療法

がん治療革命の牽引役 「オプジーボ」に最後の望みを託す

(C)日刊ゲンダイ

「人類最大の敵である“がん”に勝利できるかもしれない」――。世界中のがん研究者から熱い視線が注がれているのが、新しいコンセプトの抗がん剤「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)だ。2014年の登場以来、その効果や副作用がさまざま報じられているが、「がん治療革命の牽引役となる」との噂は本当なのか?

 オプジーボは、免疫学の研究では世界的に知られている京都大学の本庶佑教授(現・静岡県公立大学法人理事長)を中心に、小野薬品工業(本社・大阪)等で研究・開発された。

 日本では、昨年7月に世界に先駆けて根治切除不能な「メラノーマ」(悪性黒色腫)の治療薬として承認され、近く切除不能の「非小細胞肺がん」も対象となる方針だ。その効果は抜群で、2012年に世界的権威のある医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」で「過去30年で試みられたがん免疫療法で、最も高い奏効率(がん消失または一定割合以上縮小した人の割合)」と称されたほどだ。

 現在、世界中で前立腺がん、大腸がん、腎細胞がんなど多くのがん種での試験が行われ、有効例が認められていることから、順次適応拡大される見込みだという。

 世界中の医学界も注目している抗がん剤「オプジーボ」は、どのようにしてがんを攻撃するのか。

■「がん免疫監視」システムを正常に戻しがんを消滅させる

 そもそも、がんには免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みがある。がん細胞の表面にある「PD-L1」というタンパク質が免疫細胞の「PD-1」というタンパク質をつかみ、がん細胞への攻撃にブレーキをかけるのだ。

 オプジーボは、あらかじめ「PD-1」をカバーすることで、がん細胞に免疫細胞がつかまれないようにして、がん細胞を攻撃させる。

 人の体内では毎日数千個ものがん細胞が生じているが、免疫はこれを排除してがん発症を防いでいる。オプジーボは本来、人が持つ「がん免疫監視」システムを正常に戻すことで、がんを消滅させる薬なのだ。

 栃木県内で、代々歯科医院を開業しているAさん(62)が言う。

「私は昨年から、このオプジーボの使用に踏み切りました。病名は『小細胞肺がん』(肺がんの20%を占める)です」

 5年前の2011年、Aさんは珍しく風邪をひいた。その風邪がなかなか治らず咳も止まらなかった。そのうち、手がしびれるという症状が重なり、しびれは、背中、腰にまで及んだ。

 Aさんには、知人や友人に医師が多い。大学病院などいくつかの病院で診察を受け、その後、地元・宇都宮にある病院に改めて検査入院したところ、「肺がんです。ステージは末期に近い4で、余命は数カ月」と告知された。

 すぐに抗がん剤や放射線治療を受けたが、がんはしつこく、しぶとい。鎖骨、リンパ腺や脳にも転移した。

 歯学部学生在籍の息子を持つAさんが、最後に頼ったのが「オプジーボ」だった。