隠れ「脂質異常症」は油断禁物…要注意は健康診断の時季

「異常なし」でも油断は禁物
「異常なし」でも油断は禁物(C)日刊ゲンダイ

 脂質異常症は、血液中の脂質が多くなり、血管の壁にコレステロールがたまって血管が狭く硬くなる病気だ。自覚症状はないので検査しないと見つからないが、検査で脂質異常症と診断されていなくても、安心できないケースがある。東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也講師に聞いた。

 脂質異常症が恐ろしいのは、放置すると動脈硬化が進行し、脳や心臓につながる血流が滞り、脳卒中や心筋梗塞を引き起こすからだ。

 脳卒中や心筋梗塞は、治療が早ければ命は助かるが、後遺症が残ってこれまでの社会生活が送れなくなる可能性がある。もちろん、治療が遅れれば命を落とす結果になる。先日、梅田の繁華街で車が暴走し11人が死傷する事故が起きたが、運転手の大動脈解離が原因になったとみられている。この大動脈解離にも、動脈硬化を引き起こす脂質異常症が関係している。

 脂質異常症は、「LDL(悪玉)コレステロールが高い」「HDL(善玉)コレステロールが低い」「中性脂肪が高い」のいずれかに該当する場合、診断される。

「このうちLDLコレステロールは、季節によって変動しやすい。冬場は高く、夏場は低くなりやすいのです。さらに、ストレスや睡眠不足、体重の増減の影響も受けます」

 そこで問題になるのは「いつ検査を受けるか」。普通のサラリーマンで、しばしば病院を受診して血液検査を受けている人はまずいない。健康度を測るのに、年1回の健康診断を頼りにしている人が大半のはずだ。

「健康診断は大抵、4月から9月にかけて行われます。この季節はLDLコレステロールをはじめ、血糖値や血圧などの数値が比較的いい。9月以降から悪くなり始め、忘年会や新年会など暴飲暴食に陥りがちで、寒さで体を動かすことも減る季節の12月や1月に最も数値が悪くなります」

■健康診断が4~9月なら…

 どの季節に測っても数値が悪い人は別にして、微妙なところに位置する人は、検査では「ギリギリだが、正常範囲内」となるかもしれない。

 しかし、前述の通り、LDLコレステロールは季節だけでなく生活習慣の影響を受けやすい。冬になるにつれ数値が徐々に上がり、乱れた生活習慣が加わったために急上昇――ということが大いにあり得る。

「中性脂肪は食事に気を付ければ下がりやすく、一方で食べ過ぎたり、脂っこいものを取り過ぎたりすると、一気に高くなります。LDLコレステロールの高さと中性脂肪の高さが重なり、治療を受けないままでいたら、より動脈硬化は進行しやすいでしょう」

 さらに、最近明らかになっているのは、LDLコレステロールは「低値安定」が望ましく、高くなったり低くなったりを繰り返すと、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まるということだ。数値の状態が悪い人ほど、数値の高低の不安定さが大きなダメージにつながる。

「つまり、LDLコレステロールは数値の変動も見なくてはならないのです。脂質異常症が見逃されていて、しかも数値の変動にも気付かれないでいるのは問題です。余裕をもってLDLコレステロールが低い数値を保っている人はいいですが、ギリギリの数値の人は定期的にチェックして、本当に正常範囲かを見なくてはなりません」

 脂質異常症、高血圧、糖尿病はどれも動脈硬化の要因だが、脂質異常症は一番最初に表れやすい。脂質異常症への正しい対策は、その後に起こるかもしれない病気の対策にもなるのだ。

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