がん治療を変える 日本発新免疫療法

痛みが消え車椅子ともオサラバできる 新たな免疫療法が登場

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「私は、この新しい免疫療法を信じ、オプジーボ点滴の治療を続けています。今は痛みが消え、車椅子なしで自力で歩けるようになりました」

 こう語るのは一昨年末に「小細胞肺がん」と告知された栃木県内の歯科医師・Aさん(62)だ。

 告知された時のAさんは最悪の状況だった。進行度合いを示すステージは、末期がんに当たる「4」で、手術不能な状態。大学病院や専門病院を訪ねて抗がん剤治療や放射線治療を受けたが、症状は一進一退だった。中には「治療は最小限にして好きなことをさせてあげてください」と家族に告げた医師もいたという。

 それでもめげずに治療を続けてきたが、昨年初めから強い痛みで歩くこともできなくなり、車椅子が必要になった。

 一口に肺がんといっても大きく2種類ある。がん細胞が肺に散り散りにできる「小細胞肺がん」と、がん細胞が塊になってできる「非小細胞肺がん」だ。Aさんがかかった「小細胞肺がん」は患者数が少なく、「非小細胞肺がん」よりも悪性度は高いといわれていて、発見が遅過ぎた。

 そんなAさんがオプジーボと出合ったのは「東京新宿メディカルセンター」(元「厚生年金病院」=東京・新宿)で放射線治療を受けた昨年春。黒崎弘正放射線治療科部長から、「新たな免疫療法『オプジーボ』を使用する治療法もありますよ」と聞かされた。初めて耳にする薬だったが、Aさんは医療者としての直感で「効果があるかもしれない」と感じたという。すぐにインターネットなどで調べ、歯学部生である息子にも相談して治療を決断した。

「別の知人にオプジーボで治療している千葉県下のクリニックを紹介してもらいました。正直、期待せずにやるだけやってみようと考えたのです。ところが私のがん治療にはこれが“ヒット”しました。肺がんの腫瘍マーカーが下がり始めたのです」(Aさん)

 まったく新しい作用機序である免疫療法ということで副作用も気にはなった。しかし、「人の体内では毎日数千個ものがん細胞が出来ていて、正常な免疫細胞はこれを排除してがん発症を防いでいる」という「がん免疫監視」システムを正常に戻すだけの薬なら、副作用はあっても大きくはない、と信じたという。

 厚労省は1月末、「オプジーボ」の使用に当たっては、特に1型糖尿病を発病させる副作用に注意するよう日本医師会や関連学会に通知した。しかしAさんは「命を失うよりましでしょう」と言う。