“誤診”で手術も…「膵臓がん」で知るべき2つの最新知識

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 テレビ番組のコメンテーターとしても活躍していたジャーナリストの竹田圭吾さんが、膵臓がんによって51歳の若さで亡くなったのは衝撃的だった。膵臓がんに関して知っておきたい2つの新トピックスを紹介する。

 膵臓がんの宣告を受け、治療を受けている人の中には、「がんではない人」が混ざっているかもしれない。21世紀の新しい疾患として徐々に注目を集めているのが「自己免疫性膵炎」だ。世界的な医学雑誌「ランセット」で、膵臓がんの最新知見を論文でまとめる責任者に指名されている、がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科・神澤輝実副院長が言う。

「自己免疫性膵炎の新しい概念が日本から発信されたのは1995年です。それから研究が進められ、単なる膵臓の炎症ではなく、全身疾患として私が医学誌に報告したのが2003年です」

 当時は注目されなかったが、神澤副院長が06年に同様の報告をし、14年にはランセットに取り上げられ、国内外で知られるようになった。

 自己免疫性膵炎は膵臓に腫瘤ができる。そのため膵臓がんと間違われやすいのだが、別の病気だ。

「腫瘤ができるのは、免疫タンパク質の一種IgG4を作る細胞が異常に増えて炎症が起こることが原因。これは膵臓だけでなく全身に起こり、現在は『IgG4関連疾患』と呼ばれ、膵臓がん、胆管がん、悪性リンパ腫、下垂体腫瘍、乳がん、肺がんなど、腫瘤ができた場所のさまざまな悪性腫瘍と間違われやすいのです」

 自己免疫性膵炎は良性疾患であり、ステロイド療法が効果的だ。膵臓がんなどのがん治療とは異なる。だから、診断を的確に行わなければならないが、国内での認知度は必ずしも高くない。

「自己免疫性膵炎かどうかを調べるには、血液検査でIgG4の値を調べることが必要です」

 神澤副院長は膵臓がんの疑いがある患者のほぼ全員にIgG4の血液検査を行っているが、同じことを行っている施設は少数。

 誤診されて手術まで行われるケースもある。患者からIgG4の血液検査を求めることも念頭に置いた方がいいかもしれない。

 膵臓がんは早期発見が困難で、それゆえに手術が不可能。手の打ちようがなく生存率も極めて低い。それを避けるためには、早期慢性膵炎かどうかの確認をすべきだ。膵炎には、膵液が活性化して膵臓を消化する「急性」と、炎症で膵臓が徐々に破壊される「慢性」がある。慢性膵炎があれば、膵臓がんのリスクは健常な人の10~20倍上がる。

「慢性膵炎で定期的に膵臓がんを調べていても、膵臓の細胞が破壊されているため、画像上では小さな膵臓がんを見つけにくいのです」

 慢性膵炎は進行すると治らない。治療ではそれ以上、悪くなるのを抑えるしかなく、依然、膵臓がんのリスクは高いままだ。しかし、早期慢性膵炎で治療が始まれば、慢性膵炎に発展しない可能性がある。これは、日本が中心となって取り組んでいる試みだ。

 早期慢性膵炎は、超音波内視鏡という機器で精密検査を行うことで調べられる。一般的な膵炎の診断には超音波やCTが用いられるが、早期慢性膵炎の診断はできない。

「原因はほぼアルコール。摂取量が多いほど発症しやすくなるが、その量は個人差があります」

 飲酒習慣があり、飲むとお腹や背中が痛む。膵臓から分泌される消化酵素アミラーゼの数値が、血液検査や尿検査で高い。もし該当するなら、早期慢性膵炎、そこまでいかなくてもせめて慢性膵炎のチェックはした方がいい。

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