がん治療を変える 日本発新免疫療法

オプジーボ投与による治療で腫瘍マーカーが25分の1にダウン

(C)日刊ゲンダイ

 今年に入り、栃木県内で歯科医院を営む60代のAさんは、「小細胞肺がん」治療のため、新たな免疫療法剤である「オプジーボ」投与による2回目の治療をスタートした。

 初回の治療では、肺の病変は投与開始から3カ月の間にみるみる小さくなり、肺がんの腫瘍マーカーである「ProGRP」も5000pg/mlから200pg/mlまで下がった。それまでは車椅子にも座れないほどであった全身の痛みも解消され、歩けるようになったという。初回の治療は、腫瘍が小さくなったところで一時中断した。

「初回の治療を受けた後も毎月検査を受けました。いつ、がんが増大するか、不安だったからです。しかし、腫瘍マーカーが少しずつ上昇する以外は特に変化はありませんでした。2回目の治療を受けたのは、ProGRPが上昇傾向にあったからです。がんが増大したからではありません。腫瘍は小さくなったままでしたが、医師と相談して“早めにまた治療を行おう”ということになったのです」(Aさん)

■月に100万円を超える治療費

 ただし、治療費には頭を痛めたという。「オプジーボ」によるがん治療は日本の場合、根治切除不能なメラノーマ(悪性黒色腫)に続き、昨年末に切除不能な「非小細胞肺がん」も保険対象とされる方針が発表されている。ところがAさんの肺がんは「小細胞がん」であったため、保険が適応されず、自費診療となり、月に100万円を超える高い治療費を支払うことになったからだ。

「主人は、がんと診断されたら一括数百万円が支払われるがん保険に加入しておりましたので、助かりました。これがなければ高額なオプジーボを使うことはためらったかもしれません」(Aさんの妻)

 これまでの抗がん剤は投与を中止するとすぐに腫瘍マーカーが上昇してくることがほとんどであったが、オプジーボが効く症例では、投与後しばらく効果が続くという特殊性が示唆されている。Aさんも当初は「オプジーボを死ぬまで定期的に、投与し続けなければならない」と覚悟したが、初回治療後から2回目の治療開始まで、半年近い“休薬期間”が得られたので治療費の面でホッとしたという。Aさんの2回目の治療を担当した東京・銀座にある「銀座並木通りクリニック」の三好立院長は言う。

「Aさんの場合、2週間に1回の静脈点滴投与を行いました。私はこれまでオプジーボによる治療を11人に実施し、そのうち3人に治療効果を確認しています。治療効果症例は確率的には20%というところでしょうか。全体的に目立った副作用は今のところ認めていません。今後は、オプジーボの治療効果からもれた患者さんの診療をどのように進めていくかが、次の課題となるでしょう」