天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

1回目の手術が再手術の難易度を左右する

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 心臓の手術に“賞味期限”があるとしたら、患者さんはどのくらいならば受け入れられるでしょうか? これまでの歴史を振り返ると、「約10年」というのが専門家側の見解でした。

 この数字は、冠動脈バイパス手術で使用される足の静脈や、ブタの弁を利用した生体弁などが機能する期間を見てきた経験からはじき出されたものです。つまり、かつての心臓手術は「再手術が当たり前」と考えられていたことになります。当時は、「取りあえず命さえ助かればいい」といった考え方が一般的だったのです。

 しかし現在は、再手術や再治療のリスクを大幅に減らすような画期的な手術ができるようになりました。たとえば冠動脈バイパス手術では、より耐久性に優れた動脈をバイパスとして使うようになったことなどで、一般的には術後20年ぐらいは問題なくもつようになっています。検査や機器の進歩、手術経験の積み重ねによって、それが可能になったのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。