天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

1回目の手術が再手術の難易度を左右する

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 それでも、やはり再手術が必要になるケースはあります。改善されたとはいえ、生体弁のようにどうしても経年劣化が避けられないものもある上、現代は高齢化が進んでいます。以前は、心臓の手術は70代くらいまでとされていましたが、今は80代でも手術が行われます。そうなってくると、40~60代で手術を受けた患者さんは、20~30年後に再手術が必要になるケースが出てくるのです。

 75歳以上の高齢者ならともかく、60代以下で手術を受ける人は、2回目の手術ないしは追加治療があるということを想定しておいた方がいいでしょう。生体弁治療においては、数年後には2回目以降の治療は大きく開腹手術しないで済むカテーテル治療になる可能性が高く、再治療の選択肢として価値が高いものになっていくでしょう。とはいえ、それ以外の手術も含めて再手術を意識しておくことは必要です。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。