Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【3.11を考える】(上)発がん避けるための避難生活ががん増やす皮肉

福島では今も10万人が避難生活(11年の富岡町)/(C)日刊ゲンダイ

 福島第1原発事故から5年になる今もなお、10万人近い福島県民が避難生活を余儀なくされています。3・11に関連する話題について紹介しましょう。

 丸川珠代環境相は先月7日、長野県松本市での講演で国が掲げた除染の長期目標「年間1ミリシーベルト以下」を巡り、「何の科学的根拠もなく、時の環境相が決めた」と失言。その後、謝罪に追い込まれましたが、丸川環境相を含めて「年間1ミリシーベルト以下」について正しく理解している方は少ないでしょう。

 確かに国際放射線防護委員会(ICRP)は、「不要な被曝はできるだけ少なくするべき」という考え方から、一般市民が日常生活で受ける放射線について、年間1ミリシーベルトを「線量限度」としています。日本でもその勧告が法令に取り入れられていますが、実は「年間1ミリシーベルト」は、自然被曝と医療被曝を除いた、原発などから受ける「追加分」です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。