Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【3.11を考える】(上)発がん避けるための避難生活ががん増やす皮肉

福島では今も10万人が避難生活(11年の富岡町)/(C)日刊ゲンダイ

 日本の自然被曝は、ウラン鉱石などの資源が乏しいため、世界平均より少ない年2.1ミリシーベルト。資源が豊富なフィンランドは8ミリシーベルトで、スウェーデンは7ミリシーベルトに上ります。日本の3倍を超える自然被曝ですが、北欧にがんが多いというデータは存在しません。

■日本は医療被曝世界一

 一方、日本の医療被曝は年間3・9ミリシーベルトで世界一。これほど多いのは、日本人がいつでもどこでも安い費用で検査を受けられるからです。実際、日本人が医療機関を受診する回数は、米国の3倍と断然の1位です。世界が垂涎するわが国の「国民皆保険制度」が、医療被曝を高めているといっても過言ではありません。

 自然被曝と医療被曝を合計すると、私たち日本人の放射線被曝は年間6ミリシーベルト程度になります。前述した通り「年間1ミリシーベルト以下」は、自然被曝と医療被曝を除くものですから、“平均的”な日本人の場合、6ミリ+1ミリで7ミリシーベルトまで許容されることになるのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。