Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【3.11を考える】(上)発がん避けるための避難生活ががん増やす皮肉

福島では今も10万人が避難生活(11年の富岡町)/(C)日刊ゲンダイ

 プラス1の“追加被曝”に特別な意味はありません。それなのに、「1ミリ」にこだわり過ぎたあまり、今の福島のように大量の避難者を出している現実は否定できないでしょう。

 現在、福島の“追加”被曝量は最大でも3ミリシーベルト程度。それでがんが増えることはありませんが、5年という長期に及ぶ避難生活はそれまでの生活習慣を悪化させ、糖尿病やうつ病などの方が有意に増えることが分かっています。

 ストレスなどでたばこの本数が増えたり、食生活が乱れて野菜不足になったりすることは、被曝量の換算で100ミリシーベルトに相当。糖尿病は発がんを2割も増やすため、発がんを避けるための避難生活が、かえってがんを増やしているのは皮肉でしょう。「1ミリシーベルト」の呪縛からの解放が何より必要です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大医学部医学科卒業。同院緩和ケア診療部長を兼務。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。