有名病院 この診療科のイチ押し治療

【メタボ教育入院】東京逓信病院/内分泌・代謝内科(東京都千代田区)

(C)日刊ゲンダイ
日本初の施設で退院後10カ月で40キロやせる人も

「内臓脂肪型肥満」に加え、「耐糖能障害」「高血圧」「脂質異常症(高中性脂肪血症/低善玉コレステロール血症)」のうち、2つ以上が合併した状態を「メタボリックシンドローム(以下、メタボ)」という。冠動脈疾患や脳卒中などの動脈硬化性疾患の発症頻度が高まり、4項目すべてが揃った場合は“死の四重奏”とも呼ばれる。

 同科は、2005年にメタボの診断基準が策定されたことに合わせ、大阪の住友病院と並んで日本で初めて「メタボ教育入院」を実施したことで知られる。

 生活習慣が乱れやすい中年層のメタボ治療の重要性を、同科の川村光信部長(写真)はこう説明する。

「若くして糖尿病に移行・進展すると、寿命が10年くらい短くなることが知られています。昨年、世界で最も権威ある医学誌におけるスウェーデン人の大規模コホート研究では、糖尿病患者の平均寿命が短くなる大きな原因には、55歳くらいまでの健康管理の悪さがあると発表されました。一方、65歳を過ぎると死亡率に大きな差がなくなるとも報告されています」

■期間は2泊3日で費用は4万円

 メタボ教育入院は、メタボとはどのような病気なのかを体系的に学び、早い段階から生活習慣病の重症化を防ぐような意識改革を養ってもらうことを目的としている。同科の入院期間は2泊3日(水~金)で、費用は3割負担で約4万円だ。

 管理栄養士による食事指導では、自分の目標とする摂取エネルギー量の算出方法を学び、実際に食べて理想的な食事量を実感する。栄養バランスのいい献立が作れるように「食品交換表」の使い方なども身につけるという。

 運動指導も実際に酸素消費量を見ながら運動の強度を体感し、有酸素運動だけでなく、無理なく継続できる筋トレやサーキットトレーニングなども指導してくれる。

「入院中はこれらの学習や指導と並行して、脂肪肝や睡眠時無呼吸症候群など肥満に伴いやすい11関連疾患が隠れていないかも調べます。半数くらいの方は何かしら新たな関連疾患が見つかります」

 24時間の蓄尿検査は必須で、尿中のC-ペプチドを測ることで自分の体内から分泌されるインスリンの量を正確に知ることができる。必要があれば、経口ブドウ糖負荷試験も行うという。

「高血圧の方では、副腎にホルモン産生腫瘍ができていて、その過剰分泌で起こる内分泌性高血圧があることもかなり多い。それもホルモン検査(血液採取)で見つけられます」

 教育入院で生活習慣の改善を学んでも、継続が難しい人も多い。そのため退院後は、3カ月に1回くらいの外来通院でフォローアップする。体重が3~5キロ減ると軽い合併症ならほぼ改善する場合が多いので、当面の目標はそれをキープすること。

 治療がうまくいくと10カ月くらいまでは順調に減量でき、30~40キロの減量に成功する人も少なくない。

 また、糖尿病薬のGLP─1製剤(注射)には食欲を抑える効果もあるので、食事量を減らせない人には効果的。規則的投与で体重130キロが1年半で85キロに減った人もいるという。

■データ
郵政民営化に伴い、07年から日本郵政株式会社の直轄病院。
◆スタッフ数=医師5人
◆年間初診患者数(15年)=436人
◆メタボ教育入院数=年間約80人