がん治療を変える 日本発新免疫療法

抗がん剤と放射線 「上乗せ効果」が期待される併用治療

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 がん治療のひとつに放射線療法がある。同療法で、目下、世界中の医療機関で研究されているのが「アブ(遠く)スコパル(狙う)効果」だ。ひとつのがんに放射線を照射すると、照射していない部分のがんも縮小する効果があるというもので、ラットの実験ではすでに証明(米国メイヨー・クリニック研究グループ等)されている。

 それでは、最新の免疫療法としてこの数年、急速に注目を浴びている抗がん剤「オプジーボ」と、放射線療法の併用治療はどのような効果を生むのだろうか。「東京新宿メディカルセンター」(元厚生年金病院=東京・新宿)の黒崎弘正放射線治療科部長が言う。

「がん治療にオプジーボを使用している患者さんに、併用して放射線療法を用いることについては、これからの研究課題のひとつだと思っています。たとえば、どのタイミングで放射線治療を行うかなどです」

 黒崎部長は、60代の「小細胞肺がん」の男性患者が、他院でのオプジーボ投与を希望し、劇的な効果を得た経験をしている。

「この患者さんの場合、腫瘍は肺にあったのですが、そことは別の場所に弱い放射線を照射したところ効果が認められました。上乗せ効果を得られたのかもしれないと考えています」

 しかし、確実な上乗せ効果が期待できるものといえば、「ヤーボイ」(商品名、一般名はイピリムマブ)と呼ばれる別の免疫チェックポイント阻害剤との併用だ。

 これは、2011年に米国で承認され、40カ国以上で使われているメラノーマ(悪性黒色腫)の薬だ。

「がん細胞は、体にもともと備わっている免疫の暴走を防ぐ仕組みを悪用する性質があります。たとえば人間の免疫細胞が持つ『PD-1』というタンパク質にくっついて免疫を麻痺させ、がん細胞への攻撃にブレーキをかけるのです。これをブロックしてがんにフルパワーで攻撃できるようにするのが、オプジーボです。また、同じようにがん細胞は『CTLA―4』というタンパク質に働きかけて免疫にブレーキをかけます。このブレーキを解除させるのが『ヤーボイ』なのです」(黒崎部長)

 実はこの2つの免疫チェックポイント阻害剤をダブルで使う治療法に効果があることが分かってきたのだ。