危ない 薬の勘違い

腎臓疾患を引き起こすことも 余った薬を使うと危ない理由

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 使用期限の切れた抗生物質を服用すると、腎臓の疾患を引き起こすことがあります。感染症の治療などに使われるテトラサイクリン系抗生物質が古くなって変性すると、ファンコーニ症候群という重篤な腎臓障害の原因になるのです。

 飲み切らずに余ってしまった薬を自己判断で使用するのはとても危険です。薬剤師なら誰もが分かっている話ですが、軽く考えている患者さんも少なくありません。

 シートに封入された錠剤でも、光や温度、湿気の影響を受けます。引き出しの中に保管していても、開け閉めする際の蛍光灯の光で変色するような薬もあります。薬の成分が分解して効果が落ちるだけならばまだいいのですが、分解された成分が、冒頭の例のように体内で悪影響を及ぼす危険性もあるのです。

 薬局内のような、24時間365日空調整備された環境でも薬は分解されていくのですから、自宅で長期保管していた薬を使用することがいかに危険かお分かりいただけると思います。

 原則、処方された薬の使用期限は「医師の処方日数」です。仮に28日分処方された場合には、およそ28日が使用期限であり、それを超えた場合には薬としての使用期限が切れている可能性すらあると考えてください。

■開封と同時に空気中の細菌が侵入

 市販薬でも処方薬でも「使い切らない」ケースが多いのが目薬です。目薬は、未開封時は滅菌されていますが、開封と同時に空気中の細菌が侵入します。点眼時に容器の先端がまつげに接触した際も容器内に細菌が入ってしまいます。時間が経つとそうした細菌が繁殖するなどして薬は変質します。一度使用した点眼薬は、長期保管はできないものと考えてください。

 内服薬でも点眼薬でもその他の薬でも、外観のみでは状態の判断は困難です。製造後10年経っても外観が変わらない薬剤もあるでしょう。自宅で長期保管されていた薬を自己判断で使用するのは絶対にやめましょう。

金田崇文

金田崇文

1979年、東京都生まれ。千葉県立船橋高校を経て岡山大学薬学部を卒業。2004年からこやま薬局(岡山県)に勤務。管理薬剤師を務めながら、各地で薬や健康をテーマにした講演活動を行っている。