3週間実践で8割に効果 “低FODMAP食”で胃の調子を取り戻す

過敏性腸症候群にも効果
過敏性腸症候群にも効果(C)日刊ゲンダイ

 下痢、便秘、お腹のゴロゴロ、張り、痛み……。日頃から胃腸の調子がすぐれないという人は多い。そんな弱った胃腸を助けてくれるのが「低FODMAP食」だ。

 FODMAPとは、「発酵性」の「オリゴ糖類」「二糖類」「単糖類」「ポリオール類」のアルファベット表記の頭文字に「AND」を加えて並べたもの。これらの糖質を避けた食事を3週間続けると、8割の人で胃腸の調子が回復するという。「一流の男だけが持っている『強い胃腸』の作り方」の著者で、日本消化器病学会専門医の江田証氏(江田クリニック院長)は言う。

「これらの糖質は小腸で吸収されにくいため、小腸の中の浸透圧が高まって水分が過剰にたまってしまいます。すると、小腸が刺激されて運動が異常に高まり、お腹がゴロゴロしたり、痛みが出たりするのです。また、小腸で吸収されにくいこれらの糖質は大腸まで到達し、大腸内の腸内細菌と反応して異常発酵を起こします。これにより、水素ガスがたくさん生産されるため、お腹の張りや便秘の原因になる。水素ガスが胃や食道まで上がってくると、過剰なげっぷに悩まされます。さらに、異常発酵は有機酸などの代謝産物を大量に作り出し、下痢や腹痛を招きます」

 検査をしても原因が分からず、日頃から頻繁に下痢、便秘、腹痛などを起こす「過敏性腸症候群」という病気がある。低FODMAP食は、この病気の改善に有効だと世界中で認められている。

■過敏性腸症候群にも効果

 06年に豪州で行われた研究によると、62人の過敏性腸症候群患者に低FODMAP食を実施してもらったところ、90%近くの症状が改善した。14年には、豪州で行われた研究が権威ある医学誌「ガストロエンテロロジー」に報告されている。過敏性腸症候群の患者を(1)3週間にわたって低FODMAP食を食べたグループと、(2)通常食を食べたグループに分け、ランダム化比較試験を行ったところ、低FODMAP食のグループの70%の症状が大きく改善したという。

 日頃から胃腸の具合が悪い人は、高FODMAP食を控え、代わりに低FODMAP食を取ればいい。代表的な低FODMAP食を〈表〉にまとめてみた。

「お腹にいいといわれているヨーグルトや牛乳には『乳糖』が含まれています。一般的な“腸の常識”とは逆で、過敏性腸症候群の人は、食べ過ぎに注意です。小麦、大麦、大豆には『オリゴ糖』が豊富に含まれています。オリゴ糖は、腸の健康によい影響を与えるとしてトクホ(特定保健用食品)に認定されていますが、これも同じです。納豆やキムチなどの発酵食品も大腸内で発酵を促進するためNGです」

 乳糖、果糖、フルクタン、ガラクタンなどのオリゴ糖類を含む小麦、タマネギ、レンズ豆、ひよこ豆を控える。甘味料として使われるソルビトール、キシリトールなどのポリオール類が使われている食品を避ける。

 高乳糖食のヨーグルトや牛乳、高果糖食のハチミツ、リンゴやモモなどの果物の摂取量を減らす。こうした食事を心がければ、胃腸の調子は回復する。

「豪州などで推奨されている低FODMAP食事法は、3週間はFODMAPの高い食事をすべて避け、その後、徐々にFODMAPの高い食品の摂取をひとつずつ再開していくというものです。これを厳密に実践するのは難しいのですが、研究では、意識して高FODMAP食の摂取量を減らすだけでも、症状が改善することがわかっています」

 ただし、低FODMAP食事法は、あくまでも胃腸の調子が悪い人に向けたもの。まったく問題ない健康な人が実践すると、かえって有用な腸内細菌の代謝産物を減らしてしまうこともある。普段から、胃腸の不調に悩んでいる人は試してみる価値ありだ。

関連記事