当事者たちが明かす「医療のウラ側」

年々増える国家試験の受験者 医療現場に“適正”はあるのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
50代内科医

 18日の医師・歯科医師国家試験を皮切りに、医療関係の国家試験の合格発表が次々行われます。

 保健師・助産師・看護師国家試験は25日、薬剤師・臨床工学技士・歯科衛生士・はり師・きゅう師などは28日、診療放射線技師などが29日です。

 最近は、安定した就職先が多いという理由で医療系資格を取る人が増えているようです。医療従事者としてはうれしいことなのですが、気になるのは、「そういう人に医療の仕事の適性があるのか?」という点です。

 以前、私が勤務していた病院に優しい性格の新人看護師がいました。患者さんへの接し方が柔らかく、患者さんからはかわいがられていましたが、医師や先輩看護師の評価は逆でした。報告書は誤字脱字が多く、的確な説明ができないタイプだったからです。しかも、体力がなく、ちょっと忙しくなると動作も鈍くなる。時間や生活にルーズなところもありました。性格も優しいというより、優柔不断で人の意見に引きずられがちだったという方が正しい感じです。

 そのため、周囲からは「慎重さに欠けるため仕事をまかせられない」という評価が下されました。洗髪後のドライヤーかけやおむつ交換といった作業ばかりをやらされ、3年ももたずに辞めてしまったのです。こういうタイプの新人はいたるところにいます。

 病院はどこもチーム医療が基本です。それぞれが持つ高度なスキルを結集して、一人の患者さんの診断・治療を行います。

 そのため、医師であれ、薬剤師であれ、看護師であれ、技師であれ、コミュニケーション能力ときちょうめんさがない人は、この仕事に向きません。

 日々進歩する医療についていくには、探求心が必要です。何も考えず努力しない人は生き残れません。むろん、体力がなければ正しい判断ができなくなります。つまり、いくら性格が優しくても、生活がルーズで、人嫌いでは医療には向きません。

 せっかく国家試験に合格しても、医療の現場に立って「こんなはずじゃなかった」と失望して辞めていくのは、本人はもちろん、病院にとっても不幸なことです。医療系の仕事を志望する人は医療現場ではどんな人が求められているかを知ったうえで、資格試験にチャレンジして欲しいものです。