体が丈夫でも油断禁物…健康な人がかかる「貧血」とは?

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 しっかり寝て食べて運動し、ストレスも感じていないのに体がだるい。そんな人は貧血を疑った方がいいかもしれない。貧血が偏食や体の弱い女性の病気だというのは間違い。体が丈夫な人でも「まさか、それが?」と思うような原因で発症するケースもある。

 健康自慢の田村恭平さん(43歳=仮名)が風邪症状に襲われたのは今年1月のこと。喉が痛く、微熱があり、頭痛がした。「インフルエンザかもしれない」とも思ったが熱はそれほど高くない。近くの薬局で購入した風邪薬を飲んでいるうちに、風邪症状が消え関節痛や筋肉の痛みも治まった。

 ところがその後、体に力が入らず、めまいがして息切れするようになった。近くの病院で相談したところ、意外な病名を告げられた。

「貧血でした。しかし普段から、のりやひじき、ホウレンソウ、豚肉のレバーなど鉄分やビタミンB群が豊富な食べ物を積極的に取っていた田村さんには意外だったようです。しかし、田村さんはもともと『溶血性貧血』だったのです」

 こう言うのはサラリーマンの病気に詳しい、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長だ。

 貧血には偏食の若い女性などによく見られる「鉄欠乏性貧血」以外にも種類がある。血液をつくる骨髄が脂肪に置き換わり、赤血球や白血球を作らなくなる「再生不良性貧血」、胃や腸などの出血から起きる「出血性貧血」、ビタミンB12の欠乏によって起こる「悪性貧血」、赤血球が壊れやすいことで起きる「溶血性貧血」などだ。

「そもそも人の赤血球には約120日の寿命があります。それがなんらかの理由で異常に短縮した状態を溶血と言います。ただし、赤血球の寿命が短くなっても人の骨髄では通常の6~8倍の赤血球を作る能力があるため、普段は貧血の症状が起こりません。田村さんは生まれつき赤血球の形に異常がある溶血性貧血だったのです」(林院長)

 では、なぜ田村さんに突然、貧血症状が出たのか? ヒントは田村さんの風邪症状にあった。

「田村さんが風邪だと思っていたのは伝染性紅斑(通称りんご病)です。昨年は10年に一度の流行の年で、1月はその余波があった。大人の伝染性紅斑は、子供のようにほっぺたが赤くならずに風邪症状だけが出て自然に治まることが多い。そのため、風邪だと思う人が多いのですが、この病気にかかると、溶血性貧血の人は赤血球の数が急激に減り、貧血症状が出やすいのです」(林院長)

■マラソン、サッカー、バレー、剣道は要注意

 注意したいのは溶血性貧血は田村さんのように先天性だけでなく、全体の3割は後天的になることだ。そのひとつがスポーツによる溶血性貧血だ。

「赤血球の大部分はヘモグロビンでできていて、その多くは鉄分で構成されています。スポーツで体内の鉄分が汗として体外に出ると、血液中の赤血球の数が減り、鉄欠乏性貧血が起こります。このため、スポーツ選手は鉄分の補給が重要です。ところが、鉄分補給では治らない貧血がある。それが溶血性貧血です。マラソンやサッカー、バレー、バスケットボール、剣道など足の裏に衝撃がかかるスポーツをしている人がかかります。赤血球が足の裏の衝撃などで変化して、壊れやすくなって起こるのです」(林院長)

 ならば、スポーツで赤血球の形が変化して溶血性貧血になった人はその後もこの病気に悩まされるのだろうか?

「その心配はありません。スポーツによる溶血性貧血は、しばらく運動を休んでいれば元に戻ります」(林院長)

 貧血は健康的で体の丈夫な人もかかることを覚えておこう。

関連記事