天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

医療安全対策は患者の命に直結する

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 日頃から、必ず名前と生年月日のような二重チェックで患者さんを確認し、投薬や処置を行う際は、その都度自分だけでなく他のスタッフと2人以上でチェックする。そういった医療安全のための対策が徹底して行われているかどうか。こうした“単純”な作業の積み重ねが、患者さんの安全を守ることにつながるのです。

「患者さんを守るため」という基本理念の下で医療安全に対する教育や意識が全体に徹底されていない病院では、医師個人の功名心や経験値を上げるための独善的な医療に巻き込まれる可能性もあります。明らかに患者さんのマイナスになるような治療に対しては、通常であれば病院内のどこかでブレーキがかかるものです。しかし、そうした意識がない病院では、むちゃな手術や治療による死亡事故が起こる危険があります。

 群馬大学病院では、腹腔鏡による肝臓切除手術を受けた患者さん8人が死亡する事故が起こりました。千葉県がんセンターでは、同じく腹腔鏡手術を受けたがん患者11人が亡くなっています。医療安全対策は、患者さんの命に直結するものなのです。

 自分がそうした医療事故に巻き込まれないようにするためにも、その病院は医療安全教育や患者の安全を守るための習慣がしっかり浸透しているかどうかを確認することは、非常に重要です。

 次回は、病院の医療安全対策をチェックするための方法を紹介します。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。