役に立つオモシロ医学論文

「ゾンビ感染症」にどう立ち向かうべきか?

 先日、「ワールド・ウォーZ」というブラッド・ピット主演の映画を見ました。爆発的な感染力で人間がゾンビに変化してしまう映画です。一般的な感染症では、感染した人が死んでしまえば、感染力は極端に低くなりますが、ゾンビ感染症の場合は、死亡した感染者が動き回り、感染が急速に拡大してしまうところが厄介です。

 ゾンビ感染症が流行してしまった場合、人類はどう行動すべきなのでしょうか。

「ワールド・ウォーZ」をはじめ、ウィル・スミス主演の「アイ・アム・レジェンド」など、このテーマを扱った映画作品では、ワクチン開発による問題解決が多いようです。しかし、それは本当に妥当な行動なのでしょうか。

「ゾンビ感染症流行が発生した場合、人類はどのような手段を取ればよいのか」――。これをまじめに検討した論文が、カナダ内科学会誌2009年12月号に掲載されています。

 人口500万人の仮想都市でゾンビ感染症が流行した場合、感染拡大を阻止するための「検疫」(隔離対策)、ゾンビを人間に戻す「治療」作戦、攻撃による「掃討」作戦の3つの介入効果を数学的モデルによって検討しています。

 その結果、「検疫」は流行をわずかに遅らすだけで、都市滅亡は避けられないことが示されました。

 ゾンビ「治療」作戦は、もし仮に確実な治療法が確立した場合、ゾンビと人との共存世界になることが示されています。ただし、支配権はゾンビにあり、人類は圧倒的少数派となってしまいます。

 攻撃による「掃討」作戦は、うまくいけば10日間の戦闘でゾンビの殲滅が完了する可能性が示唆されました。

 人類が生き残るためには、戦略的にゾンビ掃討作戦を展開するしかないのかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。