Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【3.11を考える】(下)福島の米と牛肉は日本一安全だ

福島物産展で小泉進次郎(左)と内堀福島県知事
福島物産展で小泉進次郎(左)と内堀福島県知事(C)日刊ゲンダイ

 福島県飯舘村は、3.11から1カ月以上遅れた2011年4月22日、計画的避難区域に指定され、今なお全村避難が続いています。私は、その飯舘村を月1度くらいの頻度で訪問しています。事故直後、猛烈な放射線量が連日、報告されていたのはご存じでしょうが、現在の外部被曝量はせいぜい3ミリシーベルト。内部被曝はゼロといっていい状況です。

 自然被曝が7ミリシーベルトに上る北欧でも、がんは増えていません。福島はまったく問題ないのです。では、福島産の食品はどうでしょうか。

■基準値は欧米の12分の1

「米」と「牛肉」は、対象の一部を抽出して放射能を調べるサンプリング検査ではなく、全数調査が実施されています。その中で14年以来、国が定める放射能の基準値を超えたのは、自家用米の2件のみ。市場に流通する商用米ではありません。ゼロです。

 食品に含まれる放射性物質の基準は、食材1キロ当たり100ベクレル。米国やEUの12分の1以下の厳しさです。

 これほど徹底した管理をしているところは、他にありません。検査体制が充実した福島産が日本で一番安全といっても過言ではないでしょう。私は、おいしい福島米を喜んで食べています。

 野菜や果物、牛乳でも基準値超えはありませんでした。「山菜・キノコ」はまだ基準値超えがありますが、12年度は90件でしたが、14年は25件と着実に減っています。

 魚介類も全体として基準値超えは確実に減少傾向です。当初、シラスやコウナゴなど海の表層にいる魚の放射能汚染が問題になりましたが、事故の年の秋には低下。今はゼロ。カツオやマグロなど広く回遊する魚からは一度も基準値超えがありません。貝類やイカ・タコ、エビ・カニ、ワカメ・ノリなども現在は基準値以下です。

 調査は毎週、深さや海域を変え、さまざまな魚200検体を調べています。昨年4月以降、基準値を超えるものはありませんが、それでも厳しい管理から、カレイやメバルなど28種が出荷制限に。試験操業しているのは72種類。魚介類も安全性が担保されています。

 厳しい検査の結果、全食品での基準値超えは14年度に113件、全体のわずか0.3%。12年度の1035件(同3.9%)から激減しています。

 100ベクレルという基準値は、年間の追加被曝が1ミリシーベルトにならないように決められたもの。セシウムで測定していますが、他の放射性物質が含まれても、「1ミリ」を超えないように考慮されていて、内部被曝はほぼゼロですから、福島産を排除するのは間違いです。首都圏の消費者のうち3割は福島産の購入を控えるようですが、こういう方は考えを改めるべきでしょう。

 小児の甲状腺がんが増えたという指摘もあります。しかし、38万人というこれまでにないほどの大規模な調査によって、「自然発生型」の甲状腺がんを発見しているだけといえます。

 甲状腺がんは、男性の前立腺がんと同じように治療しなくて済むケースが少なくありません。韓国では、エコー検査の普及で甲状腺がんの診断率が高まり、治療不要ながんの摘出が社会問題になったほどなのです。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。