危ない 薬の勘違い

勝手に「治った」と判断してはいけない

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 薬は自己判断で勝手にやめてはいけません。以前にもお伝えしましたが、たとえば抗生物質を途中でやめてしまうと、薬剤耐性菌を作りやすくなってしまい、いまは効果的な薬がいずれ効かなくなってしまう危険もあるのです。

 そうした急性期に服用する薬だけでなく、高血圧、脂質異常症、ぜんそく、リウマチ……といった慢性疾患の患者さんが、薬を途中でやめてしまう話もよく耳にします。

「もう治ったから」「効かないから」「怖いから」など理由はさまざまです。

「治ったから」という人は、本当に治ったのでしょうか? ぜんそくやリウマチなどの疾患は、苦しい症状があり、薬でコントロールします。しかし、症状が治まってもすぐに薬を減らしたり、やめられるとは限りません。薬によっては、突然やめるとショックを起こしてしまうような危険なものもあります。徐々に減らしていかなければ体に大きな負担をかけてしまったり、症状が再発して結局、繰り返してしまうこともあるのです。

「効かないから」という場合、その薬の効果はどれくらいで表れるのでしょうか? 痛み止めのように30分で効き目を実感できる薬もありますが、効果が出るまで2カ月間かかるようなものもあります。2カ月飲んで効果の判定をする予定が、1カ月でやめてしまうと効果があるかどうかすら分からず治療が進められない場合もあるのです。

「怖いから」という人はどうでしょう? 「口から物を入れる」というケースは、食事と薬くらいしかありません。薬は直接体に影響を与える物ですから、それを続けることに不安を覚える人も多いかと思います。しかし、だからこそ「薬の特徴」を知る必要があります。3日飲んで改善が見られなければ、治療を変えたほうがいいのか。1週間では効果判定はまだ早いのか……。

 自覚症状は本人にしか分かりません。必要に応じて必ず医師や薬剤師と相談し、服用をやめてもいいのか、継続したほうがいいのかの判断をすることが大切です。

金田崇文

金田崇文

1979年、東京都生まれ。千葉県立船橋高校を経て岡山大学薬学部を卒業。2004年からこやま薬局(岡山県)に勤務。管理薬剤師を務めながら、各地で薬や健康をテーマにした講演活動を行っている。