糖尿病に絶対ならない 春の最新常識

<2>過食や運動不足だけじゃない 「寝不足」が招く高血糖

(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病の“引き金”というと「過食」や「運動不足」などをイメージしがちだが、「睡眠不足」も血糖値を上げる一因となる。糖尿病専門医でしんクリニック(東京・西蒲田)の辛浩基院長が言う。

「睡眠不足が血糖値を上げ、糖尿病の発症リスクをアップさせることは国内外での複数の研究から明らかです。その理由はいくつもありますが、睡眠不足は交感神経を活発にするホルモンの分泌を促し、『血糖』『血圧』『心拍数』を上昇させる。さらにこのホルモンは、血糖を下げるインスリンの働きを悪くすることから血糖値が上がるなどといわれています」

 実際、糖尿病の人は「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)を併発していることが多い。

「10秒以上、気道の空気の流れが止まった状態を無呼吸といい、無呼吸が一晩(7時間)で30回以上、あるいは1時間に5回以上止まった状態がSASです。08年の国際糖尿病会議では、糖尿病とSASの合併率は23%あり、重症なSAS患者ほどインスリン抵抗性が悪化し、SASを治療するとHbA1cが低くなるという国内外の研究が報告されています」(辛院長)

 下顎が小さかったり、後退していることもSASの原因だが、最大の要因は「肥満」だ。周囲の人に指摘されない限り本人に自覚がないが、「肥満」で「十分寝ていても寝たりない」「起床時に頭痛がする」などという人は糖尿病への注意が必要だ。

 睡眠不足による糖尿病発症リスクの増大を、血中遊離脂肪酸濃度の上昇でみようとする研究者もいる。

 血中遊離脂肪酸とは、脂肪組織から血液に放出されてエネルギー源として活用される脂肪分のこと。エネルギーとして使われないときは、ブドウ糖と合成してできた中性脂肪として脂肪組織に蓄えられる。血中の遊離脂肪酸が多いと高脂血症となり、インスリン抵抗性が強くなって血糖値が高くなることがわかっている。

 米国シカゴ大学医学部の研究チームの実験では、18~30歳の19人の健康な男性を4晩続けて8.5時間睡眠をとる群と、4.5時間強の睡眠をとる群に分けて血糖値と血中遊離脂肪酸の濃度を調べた。

「参加者は睡眠状況や食事が厳しく管理され、血液は15分あるいは30分ごとに計測。成長ホルモン、グルコース、インスリン、ノルアドレナリン、コルチゾールを測定し、実験終了後に耐糖能試験を実施しました。その結果、睡眠時間の短かった群は深夜と早朝の血中遊離脂肪酸が15~30%アップし、インスリン抵抗性も上昇したと報告しています」(別の糖尿病専門医)

 若く健康な人でも、寝不足が続けば糖尿病を発症する可能性がある。花粉症による鼻づまりと肥満で「よく眠れない」という中高年は、さらに気をつけなければならないのだ。