専門家が警鐘 子供に多発する食物アレルギーの「誤診」

乳幼児に多いアレルギーだが…
乳幼児に多いアレルギーだが…(C)日刊ゲンダイ

 ある食物を食べた後に、アレルギー反応によって湿疹や下痢、嘔吐、まれに死に至るアナフィラキシーショックを起こすのが食物アレルギーだ。乳幼児に圧倒的に多く、日本での有病率は乳児10%、幼児5%という報告がある。しかし、専門家は「食物アレルギーではない『なんちゃって食物アレルギー』が少なくない」と指摘する。昭和大学小児科の今井孝成講師(日本アレルギー学会専門医)に話を聞いた。

■医師の検査結果で「誤解」のケースも

 食物アレルギーではないのに「食物アレルギー」と勘違いされる理由はいくつかある。

 まずは、医師に診せずに親が食物アレルギーと自己判断するケース。次に、医師が検査をすることなく食物アレルギーと診断するケース。

 さらに、医師の検査結果への誤解によるケースもある。食物アレルギーの確定診断は「問診→皮膚テストか血液検査、あるいは両方→食物経口負荷試験(以下、負荷試験)」が基本だが、問診がきちんと行われていなかったり、皮膚テストや血液検査の結果だけで診断されることが珍しくない。

「皮膚テストや血液検査が陽性でも、負荷試験で陰性になることは少なくありません。その逆もあります」

 食物アレルギーと誤って判断された場合の問題点は大きい。

 食物アレルギーの対策は、アレルギー症状を起こす食品の除去、つまり「食べない」こと。乳幼児の食物アレルギーは、鶏卵、乳製品、小麦が原因の8割以上を占める。日常的な食品の多くに含まれるので、これらが食べられないと親子それぞれの苦労は計り知れない。本当は食物アレルギーではないとすると、「食べる機会」が奪われることになる。

■医師の診断を受けていても…

 加えて、もっと深刻な問題点が英国の大規模調査で明らかになった。

 乳幼児の食物アレルギーの多くは0歳児に症状が出る。離乳食前から原因とみなされる食品を除去されると、子供たちは一度もそれらを口にすることなく育つ。

「大規模調査では、食物アレルギーを起こしやすい複数の食品を生後数カ月目から離乳食で積極的に食べさせた群と、食べさせなかった群を後に比較。すると、食べさせた群の方が食物アレルギーの患者が少ないという結果が出たのです」

 従来の考え方は「乳幼児には食物アレルギーの原因となる可能性の高い食品は、離乳食などで食べさせない方がいい」だった。しかし、最新の研究結果は真逆で、「離乳食を遅らせることは食物アレルギー予防対策として決してメリットにならない」とされているのだ。

「だから、なんちゃってアレルギーのために本当は食べられるかもしれない物を食べないようにすることは、食生活において不都合を強いるばかりか、かえって食物アレルギーを起こしやすくしているかもしれないのです」

 今井医師が強調するのは、(1)親は過剰な心配をやめ、普通に食べさせる。(2)湿疹など症状が出たら、乳幼児の食物アレルギーに詳しい医師に診てもらう。(3)食物アレルギーと診断されれば、定期的に負荷試験を行って「症状が出ない量」や「食べられるようになったのか」を調べる――の3点だ。

「食べる量を減らすと症状が出ないなら、その量は食べられます。また、多くの食物アレルギー児は成長すると治っていく。必要最小限の除去をしながら、出来るだけ早く『食べられる時期』を負荷試験で見つけることに努めてください」

 あなたの子供は、本当の食物アレルギーだろうか?

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