糖尿病に絶対ならない 春の最新常識

<3>今や医学常識「うつ病の人は糖尿病になりやすい」のワケ

(C)日刊ゲンダイ
糖尿病に追いやる抗うつ薬の副作用

 日照時間が長くなる春は、季節性うつが解消される半面、「転勤」「異動」「退職」などの環境変化に伴い、新たなうつ症状を発症しやすい季節だ。

 そこで気をつけたいのが糖尿病とうつ病との関係だ。実際、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所が「糖尿病とうつ病の併発」について39の研究結果をメタ分析したところ、糖尿病の人でうつ病を併発しているのは11・4%、その疑いがある人は31%もいた。

 逆にうつ病の人は糖尿病になりやすいのか? 糖尿病専門医でしんクリニック(東京・西蒲田)の辛浩基院長が言う。

「うつ病があると、糖尿病になりやすいというのも国内外のさまざまな論文から明らかで、今や医学常識といっていい。その理由には、うつ病による身体活動の低下とストレス解消のための過食が挙げられます。その結果、多くの人が肥満になるが、うつ病の人はやせるために食事を我慢したり、運動するなどの自己管理が苦手。そのことが新たなストレスを呼び込み過食を加速させ、糖尿病を発症させるのです」

 こうした状況に拍車を掛けるのが一部の抗うつ薬の副作用だ。

「以前、うつ病は“心の風邪”というキャンペーンが行われ、薬を飲めば簡単に治る病気というイメージを持たれましたが、うのみにしてはいけません。うつ病の治療には長い時間がかかりますし、抗うつ薬にもさまざまな副作用がある。特に気をつけなければならないのは食欲増進作用による糖尿病の発症です」(辛院長)

「米国医師会雑誌精神医学」(2016年1月20日)電子版は、「若年者への抗精神病薬の長期処方は糖尿病リスクを有意に高める」という論文を掲載して話題になった。3カ月以上、抗精神薬を飲んでいる2~24歳の糖尿病発症率を調べた複数の研究をメタ分析したもので、結果は抗精神薬を使わない人の2倍、健康な人の2・6倍も糖尿病発症率が高かった。

 抗うつ薬の中でも、食欲が増進し体重を増やすことが多いといわれるのは「リフレックス」「パキシル」「トリプタノール」といった抗ヒスタミン作用薬と、セロトニン受容体遮断作用薬だ。

「ただし、この2つは太るメカニズムが違う。前者は食べる行動を抑えるヒスタミンを抑制することで過食となり、肥満に至る。後者は満腹中枢への刺激を失うことで食欲を高進する上、脂肪を燃焼されにくくするホルモンが分泌されることで太ります。当然、それは血糖値上昇、糖尿病発症へつながります」(首都圏の薬剤師)

 糖尿病発症リスクをアップさせるのは、初回で紹介した花粉症の薬だけではないのだ。