症状は300種類以上 妻の「更年期障害」をきちんと知る

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 春になると情緒が不安定になるという。だが、妻のイライラは季節的なものではなく、更年期障害なのかもしれない。

「醤油差しから醤油が垂れただけで怒りが爆発し、夫へ醤油差しを投げつけた」──。こう50歳前後のころを振り返るのは、50代後半のA子さん。更年期障害だった。

「何がどうしたというわけでもないのに、どうしてもイライラを抑えられなかった」

 穏やかな夫は、ひたすら耐えていたという。

 女性の更年期は閉経の前後5年間にやってくる。女性ホルモンのレベルが急激に減少し、さまざまな不調が生じるため、日常生活に支障が出るほどひどい状態になったりする。専門医は「心理的ストレスが加わると症状が強く出やすい。夫がどれほど更年期障害を理解しているかも症状の程度に大きく関わる」と言う。家庭の安穏を守るには、妻のピンチに目を背けていてはダメなのだ。

 では、何を知っておくべきか? メノポーズ(更年期)カウンセラーの佐藤みはるさんは自身の経験も踏まえ、「更年期障害について相談できるところが少ない」と指摘。「女性ホルモンの数値だけを見て、症状のつらさには耳を傾けてくれないケースも珍しくない」と言う。

■医師が病状のつらさを認識しない場合も

 B子さん(46)は、更年期障害の治療もうたうクリニックを受診したが、女性ホルモンの数値が正常範囲内だったため「問題なし」と言われた。しかし入眠障害、腰痛、腕のしびれ、うつ状態がひどく、別の病院を受診。そこでは子宮の大きさを調べ、乳がん検査、頚動脈の検査などもした上で更年期障害と診断。治療が始まった。

「女性ホルモンの数値と更年期障害のつらさは、一致していない。それを認識していない医師もいる」(佐藤さん)

 更年期障害の症状は300種類以上。更年期障害による不調だと気づいていない人も多い。佐藤さんもそうだった。

「当時、助産師として医療機関で働いていたにもかかわらず、イライラや物忘れ、不安感、眠れないなどの不調を更年期障害ではなく、仕事の疲労と考えていました」

 佐藤さんはある勉強会で更年期障害の治療のホルモン補充療法を知り、受けてみた。3日ほどでスーッと楽になり、「更年期障害だったんだ」と思った。

 前出のB子さんも「ホルモン補充療法を始めて1週間ほどで腰痛や腕のしびれが楽になり、眠れるようになった」と話す。

「病院のどの診療科を受診しても不調の原因が分からないときは、更年期の年代なら、更年期障害を疑った方がいいかもしれません」(佐藤さん)

 つまり妻の更年期障害は、「相談できるところは少ない」「女性ホルモンの数値だけでは測れない」「専門知識を持つ医師でないと正確な診断に結びつかない」「本人が気づいていない場合がある」「治療で改善することもある」──。夫がすべきは、これらをしっかり頭に入れ、妻を支える以外にない。

 更年期障害治療中の40代後半のC子さんは「治療前は夫が何をしても怒りが生じ、つらく当たっていた。病院予約日にうつ症状で『キャンセルする』と言いだすと、夫は一緒に病院へ行こうと言ってくれた。それがなければ今でも病院に行けていなかったかもしれない。専門医に相談できたことで、自分のイライラや怒りを客観的に見ることができるようになった」と話す。

 醤油差しが飛んできたら一緒に病院に行くときだ。

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