また、ちょっとうっかりして患者さんを死なせてしまったなんてことも絶対にあってはいけません。これは、他の職業であれば業務上過失致死罪に当たる犯罪で、逮捕されます。医師は「自分たちだけがそうではないのはおかしい」ということを常に感じていなければいけないのです。
しかし、医療の世界で過ごしているうちに、「おかしい」と思う感覚がどんどん薄れていくこともあるのです。そうなると、しっかりしたエビデンス(科学的根拠)がない腹腔鏡手術によって18人の患者さんを死亡させてしまった群馬大学病院のような事故につながります。
むちゃな生体肝移植を受けた患者10人中7人が死亡した「神戸国際フロンティアメディカルセンター」の医療事故も同様です。どんなに重症な患者さんだったとしても、手術をしなければその分だけ長く生きられた可能性が高い。そうした患者さんの基本的人権を医療が奪ってしまったわけです。病気で苦しんだまま生きることになるのではないか? といった議論はありますが、それはまた別の話です。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」