役に立つオモシロ医学論文

チョコが心臓病予防になるって本当?

チョコレート
チョコレート(C)日刊ゲンダイ

「チョコレートが心臓病の予防に効果があるかもしれない」という研究はこれまでにも複数報告されています。チョコレートの原料であるカカオにはカカオフラバノールという物質が含まれています。このカカオフラバノールには血圧を下げる効果、抗炎症作用や抗酸化作用があることが知られており、それが心臓病の予防につながるのではないか、というのです。

 2011年8月にはイギリス医師会誌にもチョコレートの摂取と心臓病の関連を検討した論文が掲載されました。この報告は、それまでに報告されていた7つの観察研究の結果を統合解析(メタ分析)した論文で、25~93歳の11万4009人が解析対象となりました。

 その結果、チョコレートの摂取が多い人は、低い人に比べて、心臓病のリスクが37%、脳卒中のリスクが29%、統計的にも有意に少ないことが示されました。また、この解析に含まれた7研究のうち、日本人を対象にチョコレートと糖尿病発症を検討した報告が1研究あり、チョコレートの摂取が多いと、特に男性で「糖尿病の発症が少ない可能性」が示唆されています。

 解析された研究が全て観察研究であるために、チョコレートの摂取と心臓病や脳卒中、あるいは糖尿病発症との因果関係を決定づけるものではありません。しかし、習慣的なチョコレート摂取は、おおむね健康に良い可能性を示しています。

 もちろん、市販されている一般的なチョコレートは含まれている糖分や脂質も多く、高カロリーなわけですから、食べ過ぎは逆に心臓病や糖尿病のリスクを高める危険があります。脂質や糖分の摂取を控えながら、適度にチョコレートを摂取できると良いのかもしれませんね。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。