健康は住まいがつくる

「木の香りが寝つきUP」スリット加工材でリフォーム効果あり

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 厚労省研究班の調べでは、国内の成人の3人に1人は、なんらかの不眠症状を持つとされる。その対策の一つとして、最近話題になっているのが“ほのかな木の香り”だ。東京大学名誉教授で香り研究(天然物有機化学)の第一人者、「香りの図書館」の谷田貝光克館長(理学博士)が言う。

「アロマテラピーなどで使われる天然の精油として、最近、樹木に含まれる『セドロール』という香り成分が注目されているのです。この成分は特にスギやヒバに多く含まれ、さまざまな研究から誘眠作用があることが確認されています」

 木に含まれる香りの精油成分は数十種類以上あり、木の種類によって成分構成や含有量が異なってくるが、木の香りの多くは人をリラックスさせる効果があることが分かっている。そのため木材使用が多い家ほど、健康効果の期待が高くなるという。

「木の香りで人がリラックスするのは鎮静作用によるものです。これは血圧や脈拍の上昇抑制、ストレスホルモンであるコルチゾールの減少、脳波や脳血流の測定などからも科学的に証明されています。そのような居住環境では、睡眠がよく取れて疲労回復が早く、心身がリフレッシュすることで健康にいい影響をもたらすのです」

 ただし、木の香りが強いほど効果が高いというわけでもない。谷田貝氏らは1980年代にマウスを使った運動量の実験で、香りの濃度の違いによる効果の差も導き出している。運動量が最も多かったのは、ヒノキでは0.003ppm、トドマツでは0.08ppm。単位「ppm」は、100万分の1の濃度。人でも心地よく感じる“ほのかな香り”程度がちょうどいいという。

「木造新築の家だと最初は木の香りが強く、年数がたつとだんだん香りは薄くなってきます。しかし、むしろ年数がたった方がいい。人は10億分の1(ppb)の濃度の香りでも何となく感じています。それでも、居住空間の木の香りは生理的に体にいい影響を与えているのです」

 木の天然精油のアロマオイルや芳香剤を使う場合でも、香りが強すぎないように調節することがポイントになる。

 部屋に木材が多く使われていなくても、大幅なリフォームをする必要はない。木の香りを放つ“後付け”の製品などを上手に使えばいいのだ。

「木の香りを程よく放出させるために、木材の板に溝をつけたスリット加工材の内装パネルが開発されています。それを寝室や居間の壁に貼るだけでもいいのです。それに、ヒノキ精油入りビーズや木のチップの安眠枕なども販売されています」

 人生の3分の1は睡眠の時間。生活に木の香りを取り入れて、快適な眠りを手に入れよう。