しかし、こんな生活はいずれ飽きます。ご子息の知的な渇きは、堕落した生活によって潤されることはあり得ません。いずれは、彼本来の知的な生活に戻るでしょう。
かつて、ゲーテは、「才能を授かり才能に生まれついた者は、この才能に生きることが最も美しい生き方だ」(「ヴィルヘルム・マイスター」)と述べました。精神科医の立場から言っても、知的な人はその本来の知性を十全に発揮することこそが、もっともメンタルヘルスにいいのです。
ご子息自身が、数学少年、文学少年だった時代に、このような幸福を実感しながら日々を送っていたはずです。
今は、かつて情熱を注いだ数学への夢は破れようとしているようですが、それに代わる何物かを彼なりに見つけると思います。
ともあれ、学費を出しているのはご両親です。一度は、本人を実家に呼んで、「これからどうするつもりなのか」と尋ねてみても悪くないでしょう。ご子息なりに考えがあるかもしれません。
薬に頼らないこころの健康法Q&A