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アンジ―の告白で話題に がんの遺伝子診断と予防的切除

両乳房と卵巣を切除したアンジェリーナ・ジョリー(C)日刊ゲンダイ

 費用は言うまでもなく全額自腹。仮に健康保険の乳房悪性腫瘍手術を全額自己負担した場合で計算すると、両乳房で約60万円になります。これに入院費などをプラスすると、軽く100万円を超えます。さらに乳房再建手術にも費用がかかるため総額で最低200万円以上は覚悟したほうがいいでしょう。

 甲状腺や副腎にがんを引き起こす「RET遺伝子」も注目されています。こちらは遺伝子検査を先進医療として受けられます(平均7万7000円)。RET遺伝子に異常があると、ほぼ100%の確率で甲状腺がんを発症します。副腎がんのリスクは50%です。ただし、全甲状腺がんの中でRET遺伝子の異常が原因のものは、数%以下といわれています。

 予防的切除はまだ行われていません。異常が見つかった時点で、甲状腺を全摘出するべきだという意見もあります。しかし甲状腺も副腎も、人体に必要なさまざまなホルモンを作り出す重要な臓器です。予防的に切除すれば、がんのリスクは減らせますが、ホルモン剤を一生飲み続けなければならなくなります。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。