春は気温の変化や花粉症によるクシャミの連発などから、腰痛を悪化させる人が多い。もし、ひどい腰痛を抱えているなら、ふくらはぎに“コミット”してはどうか。「病気になりたくなければふくらはぎを温めなさい」の著者で、30年以上の柔道整復師の経験がある「せき接骨院」の関博和院長に聞いた。
なぜ、ふくらはぎと腰痛が関係しているのか? 関院長はその理由として3つの要因を挙げる。
まず、血流低下だ。
「ふくらはぎが冷えると、体液の循環が悪くなり、疲労物質が体内に蓄積され、コリや痛みが悪化します。姿勢の悪さや運動不足などが加わって、特に腰に症状が出るのです。ふくらはぎには腰痛のツボがあるので、その冷えも腰痛の悪化に関係しています」
次に、バランスの悪さだ。ふくらはぎが冷えると、筋肉が緊張して硬くなる。全身の骨格や筋肉は連携して動いているので、ふくらはぎの動きが悪くなると、それを補うためにほかの筋肉に余計な負担がかかる。
「特に、ふくらはぎが硬いと足首の動きが悪くなり、重心が後ろにずれる。腰でバランスを取ることが続き、腰の筋肉も硬くなって腰痛が生じるのです」
さらに、自律神経のバランスの乱れも問題になる。
「ふくらはぎの冷えは、血管の収縮、体の緊張、血圧の上昇をもたらします。これらは交感神経が優位になって働くことで起こるので、冷えが続くと交感神経が優位に働く状況がつくられやすくなり、逆に副交感神経の働きが悪くなります」
自律神経のバランスが悪くなると、その人が酷使している部位や弱い部位に不調が出やすい。前出の血流低下、バランスの悪さによって日頃から腰にダメージが出やすい状況なので、特に腰痛を強く感じるようになるのだ。
「西洋医学では腰なら腰、肩なら肩しか見ません。ふくらはぎと腰を結び付けては考えない。また、バランスがもたらす不調にもあまり着目しません。そのため、整形外科では『ふくらはぎをケアして腰痛を改善する』という考えになかなか至らない。しかし、柔道整復師として患者さんの体に常に触れていると、腰痛を訴える人は、ほぼ、ふくらはぎが冷えています」
関院長は、ふくらはぎを温める方法として、レッグウオーマーやハイソックス、あまり締め付けないサポーターなどの着用をすすめる。加えて、極力長ズボンをはき、ふくらはぎをあらわにしないことも大切だという。
「ふくらはぎが外気に触れると冷えやすい。レッグウオーマーなどを着用する習慣をつけ、ふくらはぎが冷やされる時間を少なくするのです」
「あまり締め付けないサポーター」をすすめる理由は、むくみ解消用のきついサポーターの長時間の着用は血流を阻害し、痛みやしびれなどのトラブルを招く可能性があるからだ。物足りないくらいの弾力のサポーターの方がふくらはぎにはいい。選択に迷うなら、レッグウオーマーを使おう。
ふくらはぎのマッサージ(揉む)も温め効果があるが、きちんと実践するのは難しい。
「かなりの力を入れて揉まないと温まりません。普通の人の力ではあまり効果がありませんし、力の加減を間違えて筋線維をつぶしたり、前かがみになってやることで背中や肩のコリを招くことがあります」
ふくらはぎまでの足湯につかったり、使い捨てカイロ、ホットタオル、市販のレンジなどで温められるゲルなどを利用するのも手。
関院長は、ふくらはぎを温めることが、腰痛治療の第一歩だという。