天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「リスクコア」を提示して丁寧に説明する医師は信頼できる

天野篤順天堂大学教授(C)日刊ゲンダイ

 次に、リスクスコアを提示したうえで、「患者さんが理解できるような説明をしているかどうか」を確認してください。

 患者さんに手術の同意をしてもらう際、ただ単にリスクスコアを提示して、「あなたはこうですよ」というだけの医師は不十分です。たとえば、肺の状態が悪い患者さんの場合、画像診断ではこうなっていて、既往がこうなっていて、喫煙歴があり、COPDの要素もある。そのため、肺に問題がない患者さんに比べると、あなたは手術の危険性が20%アップします……といったように、細かく丁寧に説明して、理解してもらう必要があります。

 私がそうした術前説明を自分で行っていたときは、臓器別に状態を細かく説明して、理解してもらっていました。脳、心臓や頚動脈、肺、肝臓、腎臓、体全体の血管の状態、動脈硬化や糖尿病の程度……といったことをすべて書き出し、それぞれについて正常な人とはどう違っていて、そのために手術や合併症のリスクがどれくらいアップするのか。糖尿病を合併している患者さんには、術後の傷の治りに影響しますとか、肝硬変がある人は傷が治りにくい可能性もありますといったこともきちんと説明したうえで、手術の同意を得ていました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。