次に、リスクスコアを提示したうえで、「患者さんが理解できるような説明をしているかどうか」を確認してください。
患者さんに手術の同意をしてもらう際、ただ単にリスクスコアを提示して、「あなたはこうですよ」というだけの医師は不十分です。たとえば、肺の状態が悪い患者さんの場合、画像診断ではこうなっていて、既往がこうなっていて、喫煙歴があり、COPDの要素もある。そのため、肺に問題がない患者さんに比べると、あなたは手術の危険性が20%アップします……といったように、細かく丁寧に説明して、理解してもらう必要があります。
私がそうした術前説明を自分で行っていたときは、臓器別に状態を細かく説明して、理解してもらっていました。脳、心臓や頚動脈、肺、肝臓、腎臓、体全体の血管の状態、動脈硬化や糖尿病の程度……といったことをすべて書き出し、それぞれについて正常な人とはどう違っていて、そのために手術や合併症のリスクがどれくらいアップするのか。糖尿病を合併している患者さんには、術後の傷の治りに影響しますとか、肝硬変がある人は傷が治りにくい可能性もありますといったこともきちんと説明したうえで、手術の同意を得ていました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」