4月から新たな診療報酬に基づく医療がスタートした。病院でいつも通りの診察を受けたのに「窓口負担額が違う」と驚いた人も多いのではないか。
診療報酬とは保険診療を行う医療機関に支払われる治療費のこと。すべての診療行為は点数で決められていて、2年に1度の診療報酬改定で点数が見直しになる。今年は、その診療報酬改定の年なのだが、今回の特徴は“開業医に優しい”ともっぱらだ。
目立つのは乳児や認知症の高齢者を丁寧に診るかかりつけ医の報酬を手厚くしていること。その一方で、大病院が高い入院基本料を手にしたければ重症患者の入院率を15%以上から25%以上になるような仕組みに改めた。
また、軽症患者がいきなり大病院に行かないように、かかりつけ医の紹介状なしの初診患者には5000円以上、再診は2500円以上の全額自己負担を求めている。
その狙いは「医療の役割分担」で、高度な医療は大病院、軽症者は中小病院や診療所で診療する体制を整えるためという。
■開業医に望ましい改定
なるほど、もっともらしい話だが、患者側からすれば、隣に大病院があっても、わざわざかかりつけ医に診てもらわなければ大病院に行けない、というのは不便極まりない。実は今回の改定は「参院選を控えた与党に対する厚労省の配慮があるのでは」との見方も少なくない。内科医でNPO法人「医療ガバナンス研究所」(港区高輪)理事長の上昌広氏が言う。
「今回の診療報酬改定は、どちらかというと開業医の先生方には望ましい改定です。というのは開業医の多くは幼児や高齢者を相手にしていますから、収入アップにつながります。しかも、別途お金を払わないと大病院には紹介状なしに行けなくなるので、多くの患者さんは開業医に向かうことになります」
不思議なのは診療報酬改定の時期に合わせるかのように、「2040年には医師の数が1万8000人余る」とのニュースが流れたこと。
「開業医は医師の数が増えることには基本的に反対です。競争相手が増えて収入減を意味するからです。そのため、医師会は医学部の定員増や医学部新設には基本的に反対してきたのです。その意味では医師余りのニュースは大歓迎でしょう。しかし、似たような数字は既に2006年にはじき出されていました。わざわざこの時期に厚労省が発表するのは不自然です」(上理事長)
日本薬剤師会も調剤薬局の儲けすぎでバッシングを受けたが、過去にその政治団体である「日本薬剤師連盟」は組織内候補の自民党参院議員に問題視される分散献金をしていたことが明らかになっている。
アベノミクスの化けの皮がはがれたいま、与党にとって今夏の参院選は剣が峰。選挙対策で日本の医療がゆがめられたとしたらとんでもない話だ。
どうなる! 日本の医療