Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【江戸家猫八さんのケース】進行胃がん 怖いのは“本籍地”より肝転移

江戸家猫八(C)日刊ゲンダイ

 病状は、胃の原発巣より腹膜播種や肝転移の方がよくなかったのかもしれません。肝転移による肝機能低下は、死因になり得ることもあります。

■体重減は末期に

 では、なぜ進行するまで胃がんに気づかなかったのか。猫八さんは2月に沖縄県西表島でフルマラソンに出場する予定で昨年夏から走り込みを続けていたとのこと。そのうちに体重が減ってきたようですが、「体重の減少は練習によるもの」と勘違いしたらしく、受診のキッカケとなった激しい咳のほかに、これといった症状はなかったようです。

 よく「がんになると痩せる」と思っている方がいますが、がんで痩せるのは進行してからが一般的。早期から痩せることは、あまりありません。このことはぜひ頭に入れておいてください。体重減を手掛かりにすると、発見が遅れやすくなるのです。胃がんの早期発見には、ピロリ菌の除菌と胃カメラ検査が欠かせません。原因の95%はピロリ菌感染ですから、感染の有無を知っておくのも大切です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。