治療遅れはQOL直結 頭頚部がん早期発見に5つの必須サイン

辛い物好きは危ない
辛い物好きは危ない(C)日刊ゲンダイ

「頭頚部がん」は、脳そのものを除く、鎖骨より上の領域にできるがんのこと。具体的には、鼻、口腔、唾液腺、喉頭、咽頭、聴器、頚部、顔面皮膚などに発生するがんだ。頭頚部の領域は、嚥下、発声、味覚、嗅覚、聴覚、咀嚼、表情など人間の原始的な機能と直結する部位のため、頭頚部がんの治療の遅れは、QOL(生活の質)の低下に直結する。早期発見に結び付けるために知っておくべきことを、頭頚部がん治療の第一人者である上尾中央総合病院頭頚部外科・西嶌渡科長に聞いた。

(1)のどの違和感と痛み

 食事がのどに当たるような感じがある。のみ込めるのだが、のみ込む時に何か違和感を覚える。薬がのどにひっかかりやすい。のみ込んだ時の痛みが耳に伝わる。食べたものが舌に当たると痛みが生じる。

「このような症状が2~3週間続く場合は、口腔がん、中咽頭がん、下咽頭がんなどが疑われます」

(2)声がれ

 カラオケでの歌い過ぎや、風邪をひいた時などの声がれは、短期間に回復する。

「しかし原因不明で、2~3週間以上嗄声(声がれ)が持続し、長期にわたって喫煙習慣がある方は、喉頭がんの可能性があります」

 声帯ポリープでも声がれがあるが、専門家が見れば、がんかどうかがすぐにわかる。

 さらに、声に力が入らない、声が割れる、連続した一定時間の発声ができないといった場合、声帯を動かしている反回神経の麻痺が考えられる。進行した喉頭がん、甲状腺がん、下咽頭がんなどで起こりやすく、さらに肺がんの進行状態のサインでもある。

(3)首にしこりがある

「しこりが1個だけ触れる」あるいは「いくつかのしこりが連続して固まっている」「しこりがコロコロ動く」「しこりが固定して動かない」「しこりを押すと痛みを伴う」などは、頭頚部がんに詳しい医療機関を受診すべき。頭頚部がんのリンパ節転移の可能性がある。

(4)鼻血や血痰が2~3週間以上続く

 上顎がん、鼻腔・副鼻腔がん、喉頭がん、上中下の咽頭がん、舌がんなどは、がんの増大や損傷で出血を起こすことがある。出血が継続するなら、専門機関の受診が必要である。

(5)その他の要注意の症状

 舌の縁などにできた口内炎が2~3週間経っても治らず、出血を伴う。硬いしこりや痛みがある。これらは、舌がんが考えられる。さらに、片方だけの鼻詰まりや鼻血も、上顎がんや上咽頭がんなどが疑われ、詳しい検査が求められる。

 頭頚部がんは、ある程度「なりやすい人」がはっきりしている。

「長年における毎日の食生活の結果として発症するケースが極めて多いのが特徴です」

 リスク因子をどれだけ抱えているかを知ることは、頭頚部外科の早期発見や予防にも役立つ。

「具体的にはまず、長期間の飲酒や喫煙(受動喫煙も含む)。熱い食品や刺激食を日常的に摂取している人も要注意です。次に、義歯が合わなくて舌を刺激し、それが原因になって舌がんを発症しているケースは極めて多く見られます」

 さらに、貧血だ。鉄分が不足して生じる貧血は、舌や咽頭粘膜の修復機能に影響を及ぼすといわれ、特に女性では、下咽頭がんの発症因子になる。

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