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【糖尿病の外科治療】東京都立多摩総合医療センター内分泌代謝内科(東京都府中市)

東京都立多摩総合医療センター内分泌代謝内科の辻野元祥部長
東京都立多摩総合医療センター内分泌代謝内科の辻野元祥部長(C)日刊ゲンダイ
改善率100% インスリン注射がほぼ不要になる

 肥満度を表すBMI(体格指数)が35以上の国内の高度肥満者は、約60万人と推定されている。その高度肥満に起因する病気をもつ人に対して、2014年4月から腹腔鏡で胃を切除する減量手術(スリーブ状胃切除術)が保険適用になった。

 同院は保険診療による減量手術を東京都内で最も多く実施(今年3月現在、26例)しており、同科は糖尿病治療の選択肢として高い治療効果を得ている。同科の辻野元祥部長(写真)が言う。

「当院に通院する2型糖尿病の患者さんは約2700人いますが、BMI35以上の高度肥満の割合はだいたい1%。そのうちインスリン治療でも血糖コントロールが難しい患者さんなどが減量手術の対象になります。治療効果は劇的で、当院の改善率は100%です」

 これまで糖尿病患者の減量手術は17例だが、ほとんどの症例でHbA1c値が正常値の6%未満(1例だけ7.3%)に改善。体重減は、過重分(BMI25からの超過体重)の50%減が手術成功とされるが、同院では術後1年で80%減を達成しているという。なぜ、それほど高い治療効果を得られているのか。

「糖尿病の外科治療はチーム医療で行われますが、当院では核となる外科と内分泌代謝内科のコミットが濃厚なのが、高い治療成績につながっていると思っています。手術前から栄養士や精神科なども深く関わり、病院全体で患者さんをサポートする多職種協働のシステムができています」

 同院では、減量手術を実施している他施設から来る患者も多い。それは、術前の血糖コントロールができない人、精神疾患がある場合、術前にある程度の減量ができない人などは、手術を断られるケースがあるからだ。そのような患者には、「なぜ現時点で手術できないか」を理解してもらうように指導する。初診時の診療に1時間以上かける場合もあるという。

■薬代が大幅減

「はじめから手術ありきではありません。しかし、手術が最も有効と判断され、患者さんが望むのであれば、生活習慣の改善や薬を見直した血糖コントロールも含めて、少し時間をかけて手術のできる状態にもっていくことは十分可能です」

 外科治療の効果の持続は、術後3年間の経過を調べただけでもHbA1c値の上昇は見られないという米国の研究報告がある。同科の場合でも、ほとんどインスリン注射の必要はなくなり、内服薬を使ってもごく少量という。本来なら一生かかる薬代の負担が大幅に減るのも外科治療のメリットだ。

「インスリンと内服薬では3割負担で月2万~3万円、インスリン量が多いと年40万円かかることもあります。それが手術後では、内服薬を残しても3割負担で月1000~2000円です。この差は大きいはずです」

 減量手術にかかる費用は、1週間の個室料込みの入院でも3割負担で20万円未満。高額療養費制度を使えば、さらに安く治療できる。高度肥満の糖尿病の人にとっては画期的な治療法だ。

■データ
2010年に旧都立府中病院が全面移転し、都立小児総合医療センターと一体化して開設。
◆スタッフ数=医師12人
◆糖尿病の年間初診患者数=500~600人
◆糖尿病患者の減量手術数(2014年6月~)=17例