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細胞に“感染”させるポリオウイルスを使ったがん免疫療法

(C)日刊ゲンダイ
全身の免疫細胞が一斉に攻撃を仕掛ける

 がん免疫療法といえば、昨年から健康保険の適用が認められた「オプジーボ」が有名です。進行性小細胞肺がんと悪性黒色腫に効果があるとされ、とかくインチキ臭さがぬぐえなかった免疫療法の汚名を返上する画期的な治療薬ともてはやされています。その驚くべき薬価(1回分で73万円!)も含めて、注目されている治療法です。

 がん細胞は、免疫からの攻撃をかわすためのステルス機能を備えています。そのため、体に備わっている免疫機能だけで、がん細胞を退治するのは困難です。オプジーボはそのステルス機能を働かなくします。がん細胞は免疫細胞から丸見えになるため、やすやすと撃退されるという仕掛けです。

 従来の免疫療法は、とにかく免疫力をアップしようとして失敗を繰り返していたのですが、こちらは発想からして全く異なります。

 ところが、その上をいく新しい免疫療法が始まろうとしているのです。病原性を抑えるように改良された「ポリオ(小児まひ)ウイルス」を、がん細胞に感染させるという方法です。この改良ウイルスは、がん細胞の表面にのみ結合する性質を持っています。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。