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細胞に“感染”させるポリオウイルスを使ったがん免疫療法

(C)日刊ゲンダイ

 感染したポリオウイルスは、がん細胞を内側から溶かしてしまう性質もありますが、前回お伝えした腫瘍溶解性ウイルスほどの威力はありません。しかし、がん細胞にとりついたポリオウイルスを目がけて全身の免疫細胞が一斉に攻撃を仕掛け、激しい炎症反応を起こして、がん細胞もろとも破壊してしまうのです。

 使うのはウイルスですが、がんを破壊するのは主に人体の免疫であるため、免疫療法の一種とされています。現代人の大半は、子供のうちにポリオの予防接種を受けているため、ポリオウイルスに対する免疫が体内に備わっています。それをうまく利用した治療法というわけです。

 米国で行われた第1層の臨床試験では、24人の末期グリオーマ(脳腫瘍の一種)患者にウイルスが注入され、12人は亡くなりましたが、3人は長期生存(22カ月、34カ月、35カ月)しています。とくに2人の患者で、がんが完全に消滅したと報告されています。また、前立腺がんと乳がんでも、臨床試験が開始されることになっています。

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永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。