感染したポリオウイルスは、がん細胞を内側から溶かしてしまう性質もありますが、前回お伝えした腫瘍溶解性ウイルスほどの威力はありません。しかし、がん細胞にとりついたポリオウイルスを目がけて全身の免疫細胞が一斉に攻撃を仕掛け、激しい炎症反応を起こして、がん細胞もろとも破壊してしまうのです。
使うのはウイルスですが、がんを破壊するのは主に人体の免疫であるため、免疫療法の一種とされています。現代人の大半は、子供のうちにポリオの予防接種を受けているため、ポリオウイルスに対する免疫が体内に備わっています。それをうまく利用した治療法というわけです。
米国で行われた第1層の臨床試験では、24人の末期グリオーマ(脳腫瘍の一種)患者にウイルスが注入され、12人は亡くなりましたが、3人は長期生存(22カ月、34カ月、35カ月)しています。とくに2人の患者で、がんが完全に消滅したと報告されています。また、前立腺がんと乳がんでも、臨床試験が開始されることになっています。
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