危ない 薬の勘違い

ジェネリックと先発薬は“同じ薬”ではない

血圧手帳
血圧手帳(C)日刊ゲンダイ

「ジェネリックに替えたら血圧が上がった」

 こんな声を聞くと、ジェネリック医薬品は先発薬よりも劣っているんじゃないか――そんな気持ちになってしまいます。しかし、私はすべてのジェネリック医薬品をひとまとめにして、良い悪いを判断するのは正しくないと思っています。薬の作用は個人差があります。体調によっても効果が異なります。「薬の効果は毎日違う」ということを頭に入れておきましょう。

「プラセボ効果」という言葉があります。良くも悪くも「思い込み」が作用するという現象です。患者さんの気持ちはもちろんのこと、医師、薬剤師、看護師ら、医療者の説明によって薬の効果は大きく影響を受けます。「これはジェネリックなんだ」という先入観で対応すれば、ジェネリック医薬品が効くのか効かないのかの判断は鈍って当然なのです。

 より正確に判断を下すためには、薬の効果が出ているかどうかを客観的に確認するしかありません。その指標のひとつとして「血圧手帳」をつけてみましょう。仮に、ジェネリック医薬品に替えて血圧が上がったとします。しかし、本当にジェネリックによるものなのか。何か生活の変化で血圧が上がった可能性はないのか。普段の誤差範囲内ではないか。数日で元の数値に戻ってはいないか……。血圧手帳をつけることによって、そうした客観的な判断材料を増やすことができます。

 血圧とは違い、痛みや睡眠など“測定できないもの”に対する薬は、プラセボ効果を受けやすいといえます。とても信じやすい人、とても懐疑的な人は、どちらも注意が必要です。「おかしいな?」と思った時は、一度、冷静に考えてみる必要があります。

 患者さんは、「ジェネリックは先発薬と全く同じ薬でなければならない」という視点から脱却したほうがいいと思います。たとえ同じ薬でなくても、その薬が目的の効果を発揮すればいいのです。不安な方は、処方薬の一部だけをジェネリック医薬品で調剤することも可能です。医師や薬剤師と相談しながら、有効活用してください。

金田崇文

金田崇文

1979年、東京都生まれ。千葉県立船橋高校を経て岡山大学薬学部を卒業。2004年からこやま薬局(岡山県)に勤務。管理薬剤師を務めながら、各地で薬や健康をテーマにした講演活動を行っている。