よく眠れる春だからこそ…「睡眠リズム」崩すべからず

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「春眠暁を覚えず」というように、春はとにかく眠くなる。ただし、いたずらにずるずる寝ていると、かえって不調を招いてしまう。よく眠れる季節だからこそ、質の高い睡眠をしっかりとって、リズムを整えなければいけない。

 気温が上昇する春は、代謝率が上がり、発汗、心拍数、血圧などもアップして活動量が増える。その分、体は疲労するため、しっかり眠って回復させようとする。春になると眠くなるのはそのためだ。

 全国で睡眠セミナーを開催している作業療法士の菅原洋平氏は言う。

「気温が低い冬は、活動時や緊張状態で優位になる交感神経が活発になっています。しかし、気温が上昇して活動量が増える春は、リラックス状態で活発になる副交感神経が優位になって、体を休めようとする。この交感神経の切り替えにきちんと対応できずに睡眠のリズムが崩れてしまうと、不調を長く引きずってしまいます」

 睡眠のリズムを整えるには、「起床時間を揃える」ことが基本になる。春はよく眠れるからといって、休日になると普段より遅い時間に起きて“寝だめ”する人が増えるという。しかし、これは逆効果。「単に長時間睡眠をとれば体を休められる」という先入観は捨てた方がいい。

「睡眠のリズムが崩れてメンタル不調を訴える患者さんは、休日の起床時間が平日に比べて3時間以上遅くなっている人が多い。休日に“寝だめ”するとしても、普段の起床時間から3時間以内に起きることが大切です。起床時間が1時間遅くなると、睡眠リズムを戻すためには1日かかります。3時間ずれると3日かかるため、休日の起床時間が普段より3時間遅い人は、水曜日まで調子の悪さが続きます。木曜日、金曜日に睡眠リズムが戻っても、その頃は仕事の疲れがたまっている。それを解消しようとして土日の起床時間がまた遅くなるという悪循環になり、1週間ずっと不調が続くことになるのです」

■休日の起床時間にもコツが

 たとえば、平日は朝7時に起きている人は、休日は遅くとも10時までに起床する。どうしても普段より長く眠りたい場合は、就寝時間を早めればいい。普段より3時間多く眠りたければ、3時間早くベッドに入る。よく眠れる春は、すんなり入眠できるはずだ。

 休日の前夜は早寝することも効果的だという。

「土日の2日間が休みでとくに予定がない場合、土曜日より日曜日の方が早く起きるケースはまずありません。休みの初日の起床時間が遅れると、2日目の起床時間はズルズルとさらに遅くなります。そうなると、睡眠リズムが崩れたまま週初めを迎えることになる。休日の前夜は普段より早い時間に就寝して、平日の起床時間より3時間を超えない時間に起きるようにしてください」

 明日は休みだから……などと夜更かしして朝寝坊するのではなく、休みの前日だからこそ早寝すれば、休日はすっきり目覚めてアクティブに過ごせる。そうすれば、夜になると自然と眠くなるから、睡眠リズムを崩さずに済むのだ。

 また、春は生物の活動が活発になるため、花粉以外にもホコリやハウスダストが多く巻き上げられる。そのため、花粉症などのアレルギーによって、熟睡を邪魔される人が増える。

「アレルギーがある人の多くは、鼻が詰まって呼吸が苦しくなるから熟睡できないといわれていましたが、実はそうではありません。鼻の通りが悪くなると、空気が吸い込みづらくなって脳の血管を冷やす作用が低くなり、脳の温度が下がらないから眠れなくなるという仕組みが分かってきました。そういう場合、耳から上の部分の頭を冷やせば、脳の温度が下がって自然と眠くなります」

 冷凍庫に入れておいた乾いたタオルを枕の上半分に敷けば、簡単に頭の上半分だけを冷やすことができる。睡眠を整えて春の不調とはオサラバしたい。

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