医療数字のカラクリ

臨床試験は事故を想定しておかなければならない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 臨床試験での事故は、いくつか報告があります。2006年、イギリスで抗がん剤の候補であった物質の第1相臨床試験(編集部注=少数の健康な成人を対象に薬剤を投与し、安全性や薬物の体内動態を調べる試験)で起こりました。

 被験者8人のうち、薬物投与を受けた6人の治験参加者全員が、多臓器不全で集中治療室に入室、このうち5人は回復したものの、1人は20日後も重症の状態のままという、臨床試験の歴史に残る事故のひとつです。

 このような事故の報告があると、「臨床試験は行うべきではないのでは」と考える人がいるかもしれません。しかし、臨床試験を行うからこそ、こうした物質が市場に出回る前に止めることができたわけです。重要なのは臨床試験の中止ではなく、倫理的・科学的に行うことです。つまり、参加者に十分な情報提供がなされた上で同意が得られ、臨床試験の参加者の被害を最小限にとどめること。さらに、こうした臨床試験での事故の情報が開示されることです。

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名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」院長、「CMECジャーナルクラブ」編集長。自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員。臨床研究適正評価教育機構理事。7月末に「検診や治療に疑問を感じている方! 医療の現実、教えますから広めてください!!」(ライフサイエンス出版)を出すなど著書多数。