医療数字のカラクリ

臨床試験は事故を想定しておかなければならない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 この臨床試験では、2分ごとに被験者に物質が投与されています。さまざまな重篤な症状が投与から短時間で起きていることからすると、数時間ごと、あるいは1日ごとに投与していくような方法を取れば、2人目以降の被害は避けられた可能性が高いと思われます。こうした被害が起きることをきちんと想定し、その被害を最小限にとどめる取り組みが重要です。

 前回と今回で取り上げた2つの“事件”はある程度、情報が公開されていますが、闇に葬られた事故があった可能性もあります。最も恐ろしいのは、表には出てこないケースかもしれません。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。