末期膵臓がんにかかった「作務衣の医師」 最後の提言とは

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 どれだけ「医学」が進歩しようと変わらない事実がある。「医学」は命を延ばせるだけで、「死ぬのが怖い」という患者の苦しみを取り去ることができないことだ。だからこそ、多くのがん患者を看取り、みずからも末期の膵臓がんにかかった、ある「作務衣の医師」の言葉に耳を傾ける必要がある。

「一昨年の秋、進行した膵臓がんが見つかり手術しました。そのときの生存期間中央値は1年。平均より長生きしましたが、肝臓への転移が見つかり、がんも大きくなっているので残された時間はわずかです。私の命は夏ごろまでに尽きてしまうでしょう」

 こう語る田中雅博医師(70)は、奈良時代に建立された真言宗の名刹「西明寺」(栃木県益子町)の住職でもある。同敷地内にある「普門院診療所」(写真)で緩和ケアを手掛ける「作務衣の医師」として、多くのがん患者と向き合ってきた。

「私は常日頃から、がん患者と向き合ってきただけに、がんと分かった時は驚きも悲観もなく、とうとう自分の番が来たかと思いました。もっとも、そう思えるのも私が宗教家として心を整え、『自分に執着しない心境』を得ているからともいえます」

1 / 4 ページ

関連記事