どうなる! 日本の医療

「かかりつけ薬剤師」は財政悪化の新たな火種か?

「しかし、かかりつけ薬剤師がいたら、完全に解消できるわけではありません。かえって国の負担が増えるだけ、と心配しています。例えば生活保護者の医療費は無料です。その財源は国が75%、自治体が25%賄っていますが、自治体は国から地方交付税を受け取っていることから、事実上国の支出。つまり、生活保護者のかかりつけ薬剤師指名が増えるほど国の負担は増えるのです」(同)

 2015年7月時点の全国の生活保護受給者数は216万人。そのすべてが「かかりつけ薬剤師」の服薬指導を受ければ、1回15億円超。全員が毎月薬を受け取るとすると年間180億円の指導料が必要となる計算だ。

 そもそも国が本気でこの制度を定着させるつもりなら、お薬手帳のように患者負担を減らす施策を取ったはず。最初から普及させる気などないのではないか。

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村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。